神戸大NEWS NET 2003年11月上旬のニュース
◎【震災特集25】そして語り継ぎへ… 思い繋げる学生たち
連載「大学から震災の灯は消えたか」第25回。これまで、地域やメディア、教育現場など様々な場所での震災語り継ぎの現状を調べてきた。様々な状況のなかで行われる語り継ぎ。大学生のなかにも震災に触れた体験からその思いを持つ人たちがいる。震災の「あの日」からつながれてきた思いを、学生たちの中に探る。【11月15日 UNN】
神戸大発達科学部4年の多田圭吾さん。
この4年間、大学のボランティア団体「総合ボランティアセンター」に所属してきた。灘区などを中心に、震災の復興住宅に住む高齢者たちとの交流が主な活動だ。震災で見えてきた高齢者福祉などの問題に向き合ってきた。
ボランティアを始めたきっかけは、友達に誘われての軽い気持ちだった。しかし、ふと思い返せば、多田さん自身の震災体験も重なってくる。
震災が起きたのは、中学2年の時。自宅に被害はなく、神戸に住んでいた祖母も無事だった。「月並みやけど、テレビを見てえらい大惨事やなと思ったぐらい」。すぐに何かを始めた訳でもなく、次の日からは再び日常の生活が始まった。
ただ、「何かやりたいなという思いは残った」と多田さん。「大学に入って興味を持ったのは、その時の気持ちがあるのかも」と思い返すように話す。
ボランティア活動で関わるのは、ほとんどが震災を体験した人たち。今も週に一度、茶話会を催して復興住宅の高齢者と歓談を交す。時にはカラオケに連れて行ってもらうこともあり、「何気なく受け入れてくれることが嬉しい」と多田さん。
特に日常から意識している訳ではないが、自然と震災の時のことを語り出す人もいる。
「瓦礫の下に10時間ぐらい埋められてね」と、話すたびに同じ話を語ってくれる人。「ちょっと家に来てみ」といって、自宅で当時の記録写真を見せてくれた人。
「(震災の体験を)伝えたいんだろうな」。多田さんは率直にそう感じた。「被災の内容はテレビや新聞で知ったのと変わらない。でも、生の声はどこか違う」。
いま、多田さんは卒業論文を書き進めている。テーマは「復興住宅におけるボランティアの役割」。現状の震災復興住宅をケーススタディーに、その問題点と解決策を探る。もちろん自身のボランティア活動がベースにある。
「ボランティアをやるなかで、(震災を知る)機会に恵まれた」と多田さん。
「実際に聞いた生の声の、10のうち7ぐらいしか伝えられないかもしれない。それでも、機会があれば話したい」。そう思っている。
○ ○
「なぜ、6000人もの人が一瞬にして死ななければならなかったのか」。
神戸大で建築を学ぶ学生たちが、この問いの答えを見つけようとしている。震災犠牲者一人ひとりの遺族を訪ね、当時の状況、行動、心境を詳細に記録し、後世に残していく。98年5月に始まった「震災聞き語り調査会」は今年で、5年目を迎える。これまでに記録した犠牲者は323人にのぼる。
神戸大で建設学を専攻する浅井泰智さん(自然科学研究科修士1年)は、聞き語り調査に携わる一人。震災当時は、中学生で京都にいた。姉が神戸の大学に通っていて、灘の下宿先で被災した。「姉の状況が分からず、怖かった」という。幸い、姉は無事で、震災に触れる機会はその後減っていった。
大学入学当初から、純粋に建設だけを学びたいと思っていた。「震災聞き語り調査会」を行っている塩崎賢明・工学部教授の研究室に入ったのは、偶然だった。今も「純粋に建築だけを」という思いに変わりはない。
しかし一方で、遺族が話す「あの日」に触れ、事実を記録として残さねばとの思いを持つようになった。
遺族によって語られる「あの日」は様々。「たまたま」、兄弟で一緒に寝ていて、ひとりだけ亡くなってしまった人。「たまたま」、夜遅くまで受験勉強していて、その日の朝にかぎって、日課だったジョギングをしなかったため、部屋で亡くなった人。「たまたま」、新築していた梁が倒れてきた亡くなった人。
遺族が語る「あの日」に共通する「たまたま」。
その「たまたま」という偶然に至る、当時の光景が遺族の言葉によって再現される。普段と変わらぬ日常生活を送っていた人たちが、どうして死ななければならなかったのか。詳細に事実を記録することで、その問いに答えることができるのではないか。そう思うようになった。
聞き語り調査は対象者を探すところから始まる。教授の紹介、バイト先の知り合い、学生が持つあらゆる伝(つて)をたどって、対象者を見つける。運良く見つけることができたとしても、断られることも多い。遺族の中には、震災直後の研究目的のヒアリング調査で、辛い経験をした人もいる。調査を始める前には、「研究とは全く関係ありません。ただ記録を残したいんです」と断るのだそうだ。
浅井さんが聞き語り調査を行うにあたって気をつけていることがある。「震災直後は、やはり悲しかったですか」などという、ぶしつけな質問をしないこと。質問一つひとつに神経を使っている。遺族の心を傷つけてはいけない。その気持ちがいつもある。時には、ほとんど震災に触れないこともある。遺族が話してもいいという環境を作っていくことが大切だという。
「正直、遺族の話を聞くのは辛いし、悲しい」と浅井さんは打ち明ける。しかし、「原爆を落とされた広島では多くの犠牲者の記録が残されている。しかし、阪神・淡路大震災では犠牲者の方の記録を詳細に残したものがない。このような記録がなければ、今以上に記憶の風化が進み、震災から得られた教訓を知る手段がなくなる」と訴える。
○ ○
地域、メディア、教育現場、そして大学。被災地神戸にとどまらず、これまで様々な場所で震災語り継ぎの現状を調べてきた。
いくら時が経っても風化することのない思いがある。一方で、現実にはなかなか語られずに、薄れて行く記憶がある。
「あの日」――1995年1月17日に震災が起きたことは事実。そして、今もその思い、体験の語り継ぎが続いている。決して、十分にされているとは言えないのかも知れない。ただ、そこに込められた思いは、間違いなく「あの日」から語り継がれてきたものだ。(了)
(この連載は、震災取材班の岩崎昂志、植中喬光、吉永智哉、福田公則、上田晴子、古賀知水、河合優、小島美紀、塩谷文が担当しました)
※連載のバックナンバーはhttp://www.unn-news.com/sinsai/2003rensai/でご覧になれます。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎雨空に祭りの息吹 第30回厳夜祭
第30回厳夜祭が11月15日の午後から16日の早朝にかけて、国文キャンパスで開かれ、雨空にも関わらず、多くの参加者が見られた。【11月15日 神戸大学NEWS NET=UNN】
厳夜祭オープニングは午後5時より、国文キャンパスB棟前に設置されたメインステージで行われた。あいにくの雨も吹き飛ばす、力強い応援団のステージに、訪れた参加者は盛り上がった。応援団ステージに引き続いては、夜間主軽音楽部による「六甲音夜祭」のステージ。寒空に歌声がこだました。
模擬店は、国文キャンパスB棟の室内を中心に、11店が出店。
模擬店の一つ、震災救援隊の「SPEAK EASY」は厳夜祭に毎年、出店している。例年、世界各国の郷土料理を出すことで人気がある。「SPEAK EASY」は、「もぐり酒場」の意味。アメリカで、禁酒法が実施されていた20世紀初頭、唯一自由に酒が飲めて、自由に話せるところとして、「SPEAK EASY」は知られていた。今年は、トムヤンクンやゴイクン(ベトナム風春巻き)などベトナム料理をメニューとして出した。例年、好評を集めている特製どぶろくも、ふるまわれた。
チンドンサークル「神大モダンドンチキ」は、チンドンを見ながら特製料理が食べることができる「モダン・ド・キッチン」を出店。満席になる盛況ぶりだった。客の一人、大西正護さん(済・2年)は、「去年も来たけれど、やはり楽しいですね」とにっこり。
厳夜祭実行委員代表の柏木崇さん(営夜・3年)は「厳夜祭30年の歴史の中で初めての雨だったが、応援団が盛り上げてくれた。六甲祭にくらべ規模は小さいため、いかに楽しむかだけを考えた」と話した。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎<速報>入替戦出場が確定 アメフット
関西学生アメリカンフットボールリーグの神戸大−関大が11月15日、長居球技場で行われ、神戸大は6−41で大敗し開幕6連敗。同日の第2試合で同大が甲南大に勝利したため、神戸大の7位以下が確定。1部/2部入替戦出場が決定した。【11月15日 UNN】
●関西学生アメリカンフットボールリーグ(11月15日・長居球技場)
神戸大 0 0 0 6=6
関 大 0 28 0 13=41
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎入試方法弾力化など決定 国大協総会
国立大学の入試方法が、前期と後期を一本化できるよう見直されることが、11月12日に行われた国立大学協会総会で申し合わされた。【11月13日 UNN】
申し合せでは、募集人員を分割する場合は、学部単位で行い、前期後期の割り合いも7・5対2・5程度を基準に各大学が決定できることが決まった。また、AO(アドミッションオフィス)入試や推薦入試で相当数の学生を募集すれば、前期試験に一本化できるという。
総会ではこのほか、政府に対して今後も国立大に配分される予算を従来と同規模を確保するよう要請することも決議。来年度の政府予算は、国立大に配分する予算運営費交付金で2%削減されるなど抑制傾向にある。
これを受けて今後、▽今年度と同規模の予算を最低限確保、▽法人化移行に伴う必要経費を措置すること、▽中長期的にも必要な予算を確保できる仕組みを策定、▽各大学の努力に応じて運営費交付金を増額できることなどを求めた。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎十勝沖地震を調査 工・高田教授ら報告
神戸大工学部の高田至朗教授(地震工学)らが11月12日、北海道で9月に起きた十勝沖地震の被災地を調査した結果を発表する報告会を開き、スライド写真などで被災状況を説明した。【11月13日 UNN】
高田教授らの調査チームは10月に8日間にわたって北海道の釧路市や池田町、浦河町を訪問した。
約20年前に地震に起きた浦河町では、水道管を強化プラスチックに交換していたため、当時より被害が少なかった指摘。10年前に地震にあった釧路市では、当時マンホールが盛り上がった場所で、再び同様の被害が見つかったという。
高田教授は、家屋倒壊数が比較的少なかったことを受け、北海道の家屋は瓦が少なく基礎が固いため地震に強いと分析した。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎RAに活性酸素関与 京大と共同で実証
神戸大大学院医学系研究科と京大ウイルス研究所が11月13日までに、関節リウマチ(RA)の病状進行に「活性酸素」が関わっていることを共同研究で明らかにした。【11月13日 UNN】
RAは手足の指やひじ、ひざなどの関節が炎症を起こし、軟骨や骨の細胞が壊れて関節が変形する病気。原因不明とされ、国内には約70万人の患者がいるとされる。治療にはステロイド剤を長期的に使用する場合が多いが、免疫が抑制される副作用があるため、感染症で死亡するケースもある。
活性酸素はがんや動脈硬化などの危険因子として知られている。以前からRAの症状進行に関与が指摘されていたが、すぐに周囲の物質と反応して性質が変わってしまうため、測定が難しかった。そこで、神戸大大学院免疫学分野の熊谷俊一教授らは、活性酸素から生体を守る働きがあるタンパク質「チオレドキシン」に着目。チオレドキシンは関節の炎症で活性酸素が発生すると生成されることから、RAの患者と、ほとんど炎症がない別の病気の患者の関節液のチオレドキシン濃度を比較した。
その結果、重症の患者(20人)は一ミリリットルに平均350ナノグラム(1ナノは10億分の1)で、炎症のほとんどない患者(16人)は70ナノグラムのチオレドキシンを検出。活性酸素に反応するタンパク質が、症状の悪化とともに増加することを確認した。別の患者20人について血液を調べた研究でも、同様の増加することが判明。チオレドキシンが関節表面の滑膜細胞で作られることも分かった。
また、ネズミを使った実験では、チオレドキシンに炎症抑制効果も見られ、副作用のない治療薬開発も期待できるという。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎宿敵下し、5連覇 タッチフット
関西学生女子タッチフットボールリーグ秋季の最終節、神戸大−聖和大が11月9日に聖和大グラウンドで行われた。21−20で接戦を制した神戸大は5年連続5度目の優勝を果たした。【11月9日 神戸大学NEWS NET=UNN】
守備が光った試合だった。前半は攻撃時間こそ少なかったが、DT金島らのQBサックなどで聖和大の攻撃を封じ込む。攻撃はQB岸田のランを軸に攻めながら、第2Q2分にWR池田へのTDパスで先制。しかし、その後のシリーズで失点し、2Q終了直前にインターセプトから反撃されると、7−14で前半を折り返す。
後半に入っても一進一退の展開が続く。試合が動いたのは終了1分前だった。それぞれTDを追加して14−20とした後、30ヤードからの神戸大の第1ダウン。いつもはWRの池田が、QBのポジションに立つ。スナップと同時に一直線に走り出し、守備の中央を突き破ると、そのままエンドラインまで疾走した。劇的な同点TDの後は決勝点のTFPもきっちり奪取。残り時間は聖和大の攻撃をしのぎきり、21−20で競り勝った。
試合後、互いに抱きしめあって喜んだ選手たち。岸田主将は「本っ当に嬉しい」と破顔した。今岡コーチも「守備はほんとに良かった。彼女たち(選手たち)が考えてきた結果が出た」と評価した。
今年のROOKSは、春に挫折を味わった。秋季は4連覇中の王者がまさかの最下位。厳しい結果への悔しさは、今もチームに残っているという。
「みんなで一つのチームを作りたい」とは、岸田主将が常に口にする言葉。この試合で「ベンチもコートも一つになった」(岸田主将)という第4Qの同点TDは、ブロックが相手守備の壁をこじ開け、出来た道をQB池田が疾駆した。リーグ最優秀選手にも選ばれた池田は、「みんなの気持ちが一つになった。すごい気持ち良かった」と振り返る。
昨年のリーグでは敗れた宿敵・聖和大に雪辱を果たし、全勝でリーグ5連覇を果たした神戸大。次は学生日本一を決める東西王座決定戦(11月23日、王子スタジアム)が、さらにそこで勝利すれば社会人も含めた日本一を賭けるさくらボウルが待っている。
「日本一は心の奥にしっかりとある。まずは学生日本一を目指します」と岸田主将。念願の日本一奪還へ、笑顔で決意を語った。
【写真】抱き合って優勝を喜ぶ選手たち(11月9日・聖和大グラウンドで 撮影=曽根大詞)
●関西学生女子タッチフットボールリーグ最終節(11月9日・聖和大グラウンド)
神戸大 0 7 7 7=21
聖和大 0 14 6 0=20
▽最終順位
1位 神戸大
2位 聖和大
3位 関学
4位 武庫女大
5位 京府大
6位 同大
▽リーグ表彰選手(※神戸大選手のみ記載)
MVP(最優秀選手) 池田純子
ベストオフェンス 岸田千春
ベストディフェンス 佐々木和佳
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎2日間の収穫祭に幕 六甲祭2003
「六甲祭2003」が11月9日、2日間の祭りに幕を下ろした。2日目は愛内里菜のライブや、後夜祭などが行われ、初日以上の盛り上がりを見せた。【11月9日 神戸大学NEWS NET=UNN】
特集ページに2日目の記事を追加しました。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎六甲祭2003開幕 初日から多数の観客
2003神戸大学六甲祭が11月8日に開幕。今年のテーマは「KOBEST」で、「『神戸』で参加者が『BEST』を尽くし、全員の『HARVEST』になるように」との意味が込められている六甲台キャンパスの工事の影響でグラウンドの3分の1が使用できないなどの問題もあったが、初日から大勢の人々が訪れた。【11月8日 神戸大学NEWS NET=UNN】
【→特集ページへ】
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎【震災特集24】震災見つめ直す 震災語る研究者たち<下>
神戸大の都市安全研究センターが10月、一般に解放された。地域と大学が防災情報を共有しようという試み。岩崎信彦・文学部教授は、風化を防ぐためには地域コミュニティーとの連携が重要になるという。一方で、大学内で、震災の風化は進んでいる。「震災犠牲者聞き語り調査」を続ける室崎益輝・都市安全研究センター教授は、講議などの場で学生が震災に触れることの必要性を説く。【11月8日 UNN】
地下水可視化装置、免震構造を説明した模型、液状化を再現する振動台、地盤強度の測定器。10月25日、26日一般に解放された都市安全研究センターの実験棟には、実験設備がずらりと並ぶ。センターを訪れた子供たちが、大きな音をたてて揺れる振動台を興味深そうに見ている。都市地盤環境研究チーム の助手を務める斉藤雅彦さんはいう。「地域との交流するいい機会になれば」
同センター内にある研究棟では、石橋克彦・都市安全研究センター教授を講師に、○×のクイズ形式での講演会が開かれた。「阪神・淡路大震災の余震はまだ続いている。○か×か」と石橋克彦が質問すると、ほとんどが「×」と答えた。答えが「○」と分かると、「そうなのか」と驚いたような表情を浮かべる人もいる。
センターの一般解放は、震災が残した教訓、研究結果を地域住民と共有しようという取り組み。石橋教授は著書「阪神・淡路大震災の教訓」(岩波ブックレット)の中で、地域の人同士のつながりがいかに貧弱なものであったかが震災で露呈したと指摘している。
「大学での震災の語り継ぎを絶やさぬためには、地域コミュニティーとの連携が欠かせない」。そう話すのは、歴史・文化的見地から社会学を研究する、岩崎信彦教授。
「今でも、震災の傷は癒えていない思う。学生にその事実が伝わりさえすれば、関心を持つはずだ。だから大学が地域と連携し、震災を共有化していくことが大事」と岩崎教授。「遠回りかもしれないが、それしかない」という。
震災の年の3月、岩崎教授は文学部の大学院生らとともに神戸市の避難所をすべてまわり、聞き取り調査を行った。調査を通し感じたのは、幹線道路開発など見た目の復興は進んでいても、被災者一人ひとりの、心の復興には至っていないということを痛感した。心の復興には、文化的に震災をもう一度見つめなおすことの必要性を感じた。
「自分のやっている学問が、少しでも社会の役に立てばという気持ちがある。みんなが困っている時に、役に立たない学問ではどうしようもないでしょう」。そんな思いが、岩崎教授を突き動かした。今もその気持ちに変わりはない
○ ○
震災犠牲者一人ひとりを記録し、震災の事実を後世に伝える「犠牲者聞き語り調査」が室崎益輝・都市安全研究センター教授、塩崎賢明・工学部教授らの手によって進められている。聞き語り調査を行う中心は、工学部の大学院生ら研究員。しかし教授自ら、遺族のヒアリングを行うこともある。被災地を歩き、遺族一人ひとりの話を聞く。地道な作業の積み重ね。聞き語り調査を行った犠牲者は、300人を超える。
「統計をとるだけでなく、犠牲者の被災当時の状況、死にいたったプロセスを詳細に記した記録が必要。記録がなければ、振り返ることもできないでしょう」と塩崎教授は言う。記録を自分の研究に活かしたいというよりも、後生に残していかねばならないという責任感のほうが強い。
その聞き語り調査も必ずしもうまく進んでいるわけではない。大学でも震災が風化し、聞き語り調査に積極的に取り組もうとする学生も減った。学生は、震災当時小学生か中学生。しかも神戸大のような総合大学には、全国から多くの学生が集まる。
震災の風化の背景にはそういった事情がある。しかし「何も知らない学生に震災を伝えることができてこそ、長く語り継がれることになる」と室崎教授はいう。その意味で、今の教育が十分ではないと、室崎教授自身感じている。「神戸の大学に来ながら、震災について何も触れぬまま、卒業していってしまうのは、あまりに悲しい」と室崎教授。
風化はとめられないのか。
2000年から、講義で震災を扱う「都市安全と防災」をテーマにした総合教養科目が開講した。履修した学生を見てみると、文科系の、経済、経営、法学部の学生が8割を占める。今までは、震災は「地震学」の一つとして、理系の学生が学ぶ場合が多かった。教養科目に震災を取り入れるのは、全国でも初めて。背景には、風化への危機感がある。
室崎教授は「教養としてのみでなく、必須科目としても今後考えていくべき」という。【震災取材班 福田公則】
※連載のバックナンバーはhttp://www.unn-news.com/sinsai/2003rensai/でご覧になれます。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎前庭を「祭り」に 六甲祭前夜祭
11月8日からの六甲祭本祭を控え、応援団総部などで作るプレ六甲祭実行委員会による「前夜祭」が7日、国文キャンパス食堂前で開催された。ビンゴゲームなどの企画で六甲祭開催をPRした。【11月7日 神戸大学NEWS NET=UNN】
昨年はB棟前で行われた前夜祭。今年は人の往来の多い食堂前に場所を移して開かれた。昼休みになると、まずは応援団員らが登場し、吹奏楽部の演奏を背に華々しい演舞を披露。学祭前日で午後は全学的に休講になっているため、授業帰りの学生たちが足を止めていた。
「前庭という空間を、『祭り』の空間にしたかった」と、今年の実行委員長の土居健一さん(工・3年)。その後はマウンテンバイクなどが商品のビンゴゲームや、輪投げなどの企画で盛り上がっていた。
8日、9日はいよいよ六甲祭2003の本祭。土居委員長は「一人一人が楽しんで、『神戸大学』というものを感じてほしい」と話した。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎新企画も続々 六甲祭、明日から
六甲祭2003が11月8、9日に六甲台キャンパスで行われる。六甲台グラウンドのメインステージを中心に趣向をこらした企画が行われる。【11月7日 神戸大学NEWS NET=UNN】
今年のテーマは「KOBEST」。「神戸」で参加者が「BEST」を尽くし、全員の「HARVEST(収穫)」となるように、との思いを込めた。六甲台キャンパスの工事の影響でグラウンドの3分の1が使用できないなどの問題もあったが、4つの新企画をはじめとし、例年以上に多彩な企画が行われる。
●メインはプロコン ゲストは愛内里菜
今年の最大の目玉はメインステージの最後を飾るプロコンサート。ゲストに愛内里菜さんを迎え、11月9日午後4時から行われる予定だ。楽曲だけでなくライブの人気も高いだけに六甲祭実行委員会では「去年(GARNET CROWの6000人)より多くの観客が詰めかける」と予想している。
●「未知への航海」 講演会は海洋冒険家・堀江謙一さん
第I学舎102教室で行われる講演会のゲストは1974年にヨットによる単独無寄港世界一周航海に成功した堀江謙一さんがゲスト。「未知への航海」と題し8日午後1時30分から行われる。
●新企画は4つ 「the☆fashion show」など
今年の新企画は4つ。
「the☆fashion show」は上田安子服飾専門学校と協力して行われる本格的なファッションショー。神戸大生もモデルとして参加する予定だという。
このほか桂学園デザイン専門学校と協力して行う「F.P.N.A.〜フェイスペイント&ネイルアート〜」、参加者が実際にます目を進む「巨大すごろく」、灘区の老人クラブ連合が協力してベーゴマやけん玉などの昔ながらの遊具で遊ぶ「タイムスリップレクリエーション」が新企画として行われる。
●12組が参加予定 「ROKKO DANCE SPIRITS2003」
今年で第3回となる「ROKKO DANCE SPIRITS」。今年は26以上の応募があり、ビデオ審査で絞った結果、12組の参加が決まった。
●海事科学部生も積極参加 ステージ出演、展示など
今年の六甲祭には10月1日に神戸大と統合した神戸商船大(現・海事科学部)の学生も参加。園遊会ステージへの出演と第III学舎203教室での展示が行われる。
園遊会ステージでは「神戸商船大学統合記念企画 マジカル海パンパワー!!」が行われる。深江(海事科学部)を含む各キャンパス(六甲台、国文など)ごとに3人1組のチームを作りクイズなどに挑戦する。
また、203教室では乗船実習の様子などを収めたビデオの上映や実験に使われる船の模型の展示などが行われる予定。
石田貴之・海事科学部学生自治会長は「深江キャンパスの学生が(神戸大に)加わったことをアピールできれば」と話している。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎英語試験で表記ミス 発達の社会人入試
神戸大は11月6日、発達科学部社会人入試の英語の試験で出題ミスがあったと発表した。大学側は「合格判定に影響はない」として、予定通り20日に合格発表を行う。【11月6日 UNN】
出題ミスがあったのは、英文和訳問題で「INTENSITY」を「INTENSIFY」と誤記していた。当日の試験後に採点官が気づき、英語試験の後に行われた小論文試験終了後に受験生に説明。ミスがあった設問は全員正解とした。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎ルオニイ登頂断念 平井教授、今の思い
東チベットの未踏峰ルオニイ登頂を目指していた神戸大東チベット学術登山隊が10月31日、天候不良のため登頂を断念に関して、総隊長の平井一正・神戸大名誉教授が衛星携帯電話を通して現地からメッセージが届いた。【11月6日 神戸大NEWS NET=UNN】
メッセージは以下の通り。
「このたびは残念ながら登頂はできませんでしたが、悔しい半面、爽快な気分もあります。それは、全く未知の世界に足を踏み入れ誰も見たことのない光景、誰も触れたことのない岩、誰も知らなかった谷を初めて明らかにしたこと、そしてC1から眺めると2000mの高みにある、頂上への道がまさに不可能と思えるような困難な山に挑戦し、無事故で登山を終えたことがそういう思いに達したしだいです。
たしかにこの山は屏風を立てたような山で、よほど天候・隊員に恵まれないと登頂は不可能と思います。
幸い今回の隊は、北口登山隊長以下、神戸大学山岳会屈指のすばらしい隊員に恵まれ、その点は十分成功の可能性があったのですが、残念ながら天候が味方せず涙を呑みました。
多くの方にお世話になっておりましたが、期待を裏切る結果になってしまい、申し訳ありません。」
また、登山隊の帰国は、11月13日ごろになる見通しだという。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎約230人が聴講 NHK大学セミナー
NHK大学セミナーin神戸大学「放送とは?」(NHK神戸放送局、神戸大共催)が6日午後より、神大会館六甲ホールで開催され、学生や一般参加者、約230人が聴講した。【11月6日 神戸大NEWS NET=UNN】
セミナーは2部構成で行われ、岩崎信彦・文学部教授の講演「マスコミで働く若い人たち」で始まった。阪神・淡路大震災の復興に触れ、「取材に来たNHKのディレクターは若くして、優秀な人だった」と話した。「マスコミが伝える情報の中には、編集されていて伝えられていない部分もある」とも。
岩崎教授に続いて、NHK大阪放送局キャスターの住田功一さんの講演「放送現場最前線」が行われ、1995年の地下鉄サリン事件での取材体験などを話した。「マスコミ各社は河内長野の大学生の殺傷事件を盛んに取り上げている。心の闇など難しい問題をどう報道するのか」と学生から質問が出ると、「社会を少しでもよくするために、できることをやる。前進あるのみです」と答えた。
第2部は、タレントの「はな」さんによる「キャンパストーク」。アナウンサー2人と「はな」さんの対談形式。上智大の東洋美術学科で学んだ仏像の話や趣味のお菓子作りの話など、トークは約1時間にわたって進められた。アナウンサーが「はなさんは、どことなく仏像に似てますね」というと、「そうですか嬉しい」とはなさん。会場からは笑いがもれた。
【写真】笑顔でトークを盛り上げる「はな」さん(11月6日・神大会館六甲ホールで 撮影=福田公則)
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎木村助教授が受賞 サントリー学芸賞
第25回サントリー学芸賞が11月6日決まり、神戸大の木村幹・国際協力研究科助教授(政治・経済部門)など9人が選ばれた。副賞は各100万円。贈呈式は12月10日午後6時、丸の内の東京会館で。【11月6日 UNN】
各部門の受賞者は以下の通り。(★印は神戸大関係者)
▽政治・経済部門
★木村幹・神戸大助教授
津上俊哉・経済産業研究所上席研究員
牧原出・東北大助教授
▽芸術・文学部門
飯島洋一建築評論家・多摩美大助教授
宮崎法子・実践女大教授
▽社会・風俗部門
佐藤卓己・国際日本文化研究センター助教授
翻訳家・フリーランスライター、瀬川千秋さん
▽思想・歴史部門
ロバート・D・エルドリッヂ阪大助教授
六車由実・東北芸工大東北文化研究センター研究員
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎投薬ミスの女性死亡 医学部付属病院
神戸大医学部付属病院で起きた入院患者の女性への投薬ミスで、同病院は11月5日、この女性が死亡したと発表した。死亡の日時などについては、プライバシーに配慮して公表しない。【11月5日 UNN】
女性は今年8月、食道せん孔による感染症で入院したが、10月2日に抗凝固薬ヘパリンの代わりに誤って糖尿病用のインスリンを投与されたために血糖値が正常値の3分の1に低下。意識が混濁し、意思表示できない状態になった。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎馬場名誉教授が受賞 秋の叙勲
政府は11月3日、秋の叙勲を発表した。関西の大学の関係者も、多数受賞している。神戸大からも、馬場茂明名誉教授が受賞した。【11月3日 UNN】
関西の大学に関係する主な受賞者は以下の通り。(★印は神戸大関係者)
▽瑞宝重光章
西田龍雄(元京大文学部長) 74歳
▽旭日中綬章
古谷七五三次(大産大理事長) 71歳
▽瑞宝中綬章
赤松光雄(神戸市外大名誉教授) 77歳
池田重良(阪大名誉教授) 78歳
池中徳治(阪大名誉教授) 77歳
石井久夫(元京大事務局長) 70歳
井本正介(阪大名誉教授) 78歳
梅山馨(大市大名誉教授) 77歳
大川乾次(元関学理学部長) 78歳
片山良展(元阪大文学部長) 77歳
楠瀬正道(大市大名誉教授) 78歳
国司秀明(京大名誉教授) 78歳
難波進(阪大名誉教授) 75歳
稔野宗次(阪大名誉教授) 78歳
広田司朗(関大名誉教授) 77歳
柳島静江(京大名誉教授) 78歳
★馬場茂明(神戸大名誉教授) 77歳
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎女子・大谷大を下す 関西大学バレー
関西大学バレーボール秋季リーグ戦が11月2日、大体大などで行われた。神戸大は大谷大を3−1で下した。【11月2日 UNN】
●関西大学バレーボール秋季リーグ(11月2日・大体大ほか)
▽女子
神戸大 3−1 大谷大
滋賀文化短期大学 3−0 京産大
大芸大 3−2 姫路獨協大
相愛大 3−1 阪大
大阪成蹊短期大学 3−1 佛教大
甲南女大 3−0 大女大
奈良教大 3−2 夙川短期大学
大阪女子短期大学 3−2 金蘭短期大
▽男子
英知大 3−0 京薬大
大国大 3−1 大外大
桃山大 3−0 四天王寺国際仏大
龍谷大 3−0 京産大
大府大 3−2 京府大
姫路獨協大 3−2 神院大
京大 3−1 大教大
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎龍谷大に大敗 関西学生バスケ新人戦
関西学生バスケットボール新人戦第1日が、大谷大体育館などで行なわれた。神戸大は龍谷大に59−100で敗れた。【11月2日 UNN】
●関西学生バスケットボール新人戦第1日(11月2日・大谷大体育館など)
神戸大 59−100 龍谷大
摂南大 86−73 京大
阪大 94−40 姫路獨協大
関大 117−64 帝塚山大
関学 86−65 大工大
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎攻撃不振で逆転負け アメフット同大戦
関西学生アメフット神戸大−同大が11月2日、王子スタジアムで行われた。神戸大は第4Qに逆転を許し、13−14の逆転負け。1点に泣き、開幕5連敗を喫してしまった。【11月2日 神戸大NEWS NET=UNN】
神戸大は第1Q9分、RB大崎のTDで先制する。第2Qに入ると強くなった雨の影響もあってか同大が連続ファンブル。それらをリカバーした神戸大がリズムに乗るかと思われたが、得点に結びつけることができない。すると逆に第3Q開始直後にTDを奪われ、同点とされてしまう。
第3Q9分には、同大のファンブルにつけこみ逆転TDを奪った神戸大だが、TFPをスナップミスから失敗。この1点が大きかった。第4Q8分、同点TDを許すと同大K山下にしっかりとTFPを決められ逆転される。結局、そのまま試合終了。神戸大は1点に泣いた。
上位との戦いを4戦全敗で終えた神戸大にとって負けられない試合だった。しかし、それが気負いになってしまったのかオフェンスがまったく機能しなかった。エースQB江端の負傷で前節の立命戦からスターターを務めるQB多和のパスは16回試投5回成功66ヤードと振るわず、トータルヤードでも同大の328ヤードに対して162ヤードと2倍以上の差となってしまった。
「ディフェンスは(同大に攻撃は)出されながらも(5つの)ターンオーバーなどでよく耐えていた。結果的には(TD)2本でしょう。問題はオフェンスの精度」と矢野ヘッドコーチ。岩田主将も「あれだけディフェンスにターンオーバーしてもらっておいて得点につなげられないのは論外」とばっさり。
次は関学を56年ぶりに破った関大との対戦。もし敗れてしまえば、入れ替え戦出場の可能性がぐっと高くなってしまう。岩田主将は「(入れ替え戦は)視野には入れるけど、1戦1戦を必死にやるだけ」。本当に負けの許されない戦いが始まろうとしている。
【写真】第2Q、タックルを受けながら前進するTE石原(11月2日・王子スタジアムで 撮影=中島仁志)
●関西学生アメフット(11月2日・王子スタジアム)
神戸大 7 0 6 0=13
同 大 0 0 7 7=14
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。
◎【震災特集23】教訓、次に生かす 震災語る研究者たち<上>
阪神淡路大震災から、もうすぐ9年を迎える。講義の中で、学生同士の会話の中で、大学における震災の面影は薄れつつある。そんななか、震災に関わり続ける研究者がいる。震災そのもののに向き合い続ける人、その教訓に目を向けて今後に生かそうとする人。一人ひとりのスタイルや目的は違うが、「1・17」を原点に、語り継ごうとする気持ちは変わらない。【11月1日 UNN】
大阪府高槻市の緑のなかに建つ関大総合情報学部。メディア関係の授業が多いこの学部の授業で、阪神淡路大震災に触れられることがある。
同学部でマルチメディア教育を教える黒上晴夫教授(44)。授業では、インターネット普及の契機にもなった阪神淡路大震災にも触れている。災害時に、パンクしやすい電話などに代わるタフな情報伝達手段として、ネットの活用方法を考えるのも自身の研究教育の一環だ。
自身は神戸の生まれ。ただ、震災体験の語り継ぎについては、「当時の気持ちをそのまま伝えていくのは難しい」と考える。「生の体験から来る臨場感は、時間の流れとともに薄れていく」。
例えば、被災地で震災を体験していない人でも、当時は報道などを通して真剣に震災を受け止めた。しかし、震災を体験していない世代も増えるなかで、被災世代も含めて「臨場感」のような感覚は薄れていく。「イラク戦争なども一緒。同じ時間を共有してる情報は共感できる」。実際に大学での授業を受ける学生を見ていても、感じることだ。
ならば、震災をどう語り継ぐか。黒上教授は「(震災の)事実を素材に、カリキュラム化するのがいいと思う」と説く。臨場感をそのまま感じることは無理だが、震災被害などの事実を知り、実習や討論などの教育を通して震災を考えることで、体験を日常化する。そのために、メディアが残し続ける記録が利用できるという。
震災時は香川県にいた黒上教授。被災地の一歩外から震災を見ていたことで、記憶の風化をより一層肌で感じている。薄れていく当時の体験を語り継ぐためには、「次に生かす」ことが必要だ。
「自分の考えていることで満足いくかどうかは分からない。でも、なにもやらないよりまし」。
○ ○
「阪神・淡路大震災から学んだ三カ条。
*地震が来てからでは遅すぎる。
*安全は自分で掴み取るものだ。
*生命以上に大切なものはない。」
神戸大発達科学部で安全教育を研究している南哲(さとし)教授(62)は、青色の名刺の裏にこれらの言葉を刻んでいる。いつも手元にある、自身への警句でもある。
阪神淡路大震災を体験したのは、大学の附属住吉小・中学校の校長を兼任していた時だった。1月17日は、小学校の始業式。午前5時46分は、宝塚市の自宅で、ベッドに横になりながら朝刊を読んでいた。
そこに、突然の大きな揺れ。ベッドから放り出された。自宅には大きな被害はなかったものの、地震の影響で2月13日まで小学校は再開されなかった。校舎の損傷が激しかった中学校は使えなくなり、神戸大のキャンパスで学校を再開。生徒・保護者の犠牲者が少なかったことに胸をなでおろしたが、学校の再開や避難者の受け入れなどの対応に追われた。
校長時代には、震災のほかにも大きな事件を体験した。社会的にも注目された、大教大附属池田小学校の不審者侵入事件。安全教育を教えている以上、常に不測の事態に備える心構えは持っていたとはいえ、驚きを感じずにはいられなかった。
「万が一なんてことは一生起こらないかもしれない。でも、明日起こるかもしれない」。この思いを強くした。
震災後の1月30日、住吉中学校で被災後はじめての全校集会を持った時、南教授は生徒たちにひとつの宿題を課していた。生徒たちが震災で体験したことや、学んだことをまとめて校長あてに提出する。この「震災体験レポート」に、生徒たちのさまざまな声が集まった。
「家からは、神戸の街が一面に見えるが、そこは火の海といった感じで、煙りがすごかった。綺麗な神戸を失ったのが、凄く辛い」
「あちこちから、『誰か助けてお願い』という悲痛な声が聞こえて来ました。凄く、びっくりして、まさに戦争中の景色に見えました」
昨日まであった日常を一瞬で奪っていった震災。その悲惨さは、生徒たちの記憶にも色濃く残った。
しかし、彼らが目を向けたのは、悲惨さばかりではない。
「本当にたくさんの方々が私たちを助けてくれて、とても心強い。やっぱり人間を救えるのは人間しかいないと思う」
「避難所にいる人たちが1日でも早く、避難所から出て、自分の家が持てるようになることを願っています。その次に、もう一度、あの神戸「港町神戸」が戻ることを願っています」
大災害を通して、未来を見ようとする生徒たち。「震災を乗り切った子どもたちには、プラスのことも残るのでは」と南教授。人のやさしさや、再生に向かう強さを語る生徒たちにの姿が印象に残っている。
もう一つ、南教授が感動したことがある。被災から10か月後、附属住吉小学校で一枚の音楽CDが作られた。
「組曲『震災を乗り越えて』」。南教授が「レクイエム(鎮魂歌)」と呼ぶこの曲は、当時の小学校4〜6年生が言葉を出し合って歌詞を作った。児童たちが震災から学び取ったことを、歌詞に込めている。
「心の傷をいやし 元気づけ 勇気づける
そんな力が 魔法のような力が
音楽にはある。」(CDより)
震災で失われ、そして、語り継がれる生命がある。
「人の生命は、はかなく脆く、だけど、たくましくてね」と南教授。
大学で行っている講義でも、スライドを見せて震災の出来事と教訓を教えている。スライドの一枚目には「死ぬな ケガすな 病気すな」の文字。名刺の裏にも記した「生命」の大切さ、守り方を伝えるのが、安全教育だと考えている。
【震災取材班 岩崎昂志、福田公則】
※連載のバックナンバーはhttp://www.unn-news.com/sinsai/2003rensai/でご覧になれます。
INDEXに戻る。
NEWS NETホームページに戻る。