「あんたがそれを語るのか?」の段(2004.9.9)


 今日は今朝遭遇したちょいと不愉快な事について書くことにする。書いてしまえばわずかに残ったもやもやも雨散霧消することだろうし。


 今朝、俺はいつものように電車内で座って居眠りしながら通勤していた。ここで座席配置を明確にしておくが、座っていたのは車両の端にある座席で、車椅子用のスペースが隣にあった分長さが短く、3人掛けのものであった。そして、当初は片方の端に俺、反対側の端に女子中学生(か女子高生のどちらか)が座っており、真中は空いていた。
 で、いつものように俺は貴重な睡眠時間を確保するために眠っていた。当たり前の話だが、鞄はひざの上に置き、足も不自然に股を開いて不必要なスペースをとるというようなことはせずに普通に肩幅程度にひろげた姿勢であった。
 その時、突然ドスンと隣の俺が少し跳ね上がるほどの勢いで空いた座席に座ってきたおっさんがいた。――別にこれはかまわない。安眠を妨害されたわけだが、再び目を閉じればいいだけの話だからだ。そしておっさんは鞄から漫画雑誌を取りだすとそれをおもむろに広げた。――これも別に構いはしない。電車内で漫画を読んでいけないという法はないし、俺もすることがある。
 しかし、そのおっさんはあろうことかひじと全身を使って左隣に座っていた俺を圧迫しだしたのである。

 この時思ったのは、「何しよんねん、このおっさん」である。当然これでは眠れるわけもなく、おとなしく圧されっぱなしになって窮屈な思いをする理由はどこにもないので、俺は自分の肩幅のスペースは確保すべく左肘で押し返した。
 するとおっさんは誰に言うともなく(というか明確に俺に向かって言わずに)、ぼそっと「なにするんや・・・」とつぶやいた。
 ――先に言われた!?(笑) つーか、そのセリフを言う権利は俺にしかないはずなのだが?
 しかし、こちらが明らかに「もうこっちくんな」と態度で示しているにもかかわらず、おっさんは漫画を広げたまま(そのせいでおっさんの肘がこちらに浸食してきていることは推察していただけるだろう)なおもこちらを圧迫するのをやめようとしない。
 そこで俺は面倒だとは思いながらも「すいません、もう少しそっちに詰めてもらえませんか。狭いんで」とあくまでも丁寧に話しかけた。それに対するおっさんの返答はこうだ。「そんな、こっち側は女の子やからつめられへんわ」

 これは一見まともな発言に見える。だが、実は全くそんなことはない。理由はあげつらうのも馬鹿馬鹿しいが念のために説明しておく。まず、反対側の女の子は普通の小柄な女の子で普通に座っていた。そしておっさんはありふれた中年で、俺は特に太っているわけでもない。つまり、普通に座っていればこの3人掛けの座席で窮屈な思いをする必要など――ましてや隣の人を圧迫する必要などあろうはずもないのだ。
 さらに言えば、人の道として、電車で空いてるスペースに座れたら、先に座ってる人を押しのけてまでその領域を広げるべきではないだろう。座れたらその幸運に満足し、少し肩身が狭くても我慢するのが道理というものだ。
 そしておっさんはいきなり逆ギレ気味で「あんた腕組みたいんやろ、組んだらええやないか」とかのたまった。――確かに俺は胸の前で腕を組んでいた。が、肩幅を超えない範囲で腕を組むことのどこがおかしいのか。おっさんはさも俺が腕を組むことで不必要なスペースをとっている様に言うが、それは認識が間違っている。
 おっさんはそうして自分の腕を少し浮かし、俺に腕を組めとうながした。しかし、もちろん俺が言っているのは「全身で圧迫してくんな」ということであり、「普通に座れよ」ということなので、「そういうことを言ってるんじゃないんですけどね」と呆れ気味に言ったらおっさんは逆ギレに磨きがかかってきた。

 曰く「あんたもっと譲り合いの精神をもたなあかんで」
 ――その口で、そのセリフを?(笑) あんまりといえばあんまりな発言なので、「それはあなたも同じでしょう」と冷静に返した。すると、
 曰く「常識をしらんのか。譲り合いをするのは常識やぞ」
 ――だから、なんであんたがそんなセリフを口にできるのかわからない。
 曰く「どこの学生さんか知らんけど―――」
 ――いや、俺は高校生じゃないって! しかしこの発言からも相手の見た目と属性で判断して偉そうな態度に出ていることが見て取れる。きっとこういう人に限って、俺の見た目がいかつかったら隣で縮こまってるかそもそも隣に座ろうともせんのだろうな。
 曰く「そんなんじゃ殴られるで」
 ――ほほう、つまりそれはあんたが俺を殴りたくてしょうがないってことだな(苦笑) 俺としては殴りかかってきてもらった方が、取り押さえて鉄警隊に突き出すことができるのでよかったのだが、残念ながら口先だけのおっさんは実力行使には出なかった。

 ちなみに俺はもう、いきなりキレ始めた時点でコミュニケーションをとることを諦めていた。過ちを犯すのは仕方ない、意図せずに他人に迷惑をかけることもあるかもしれない。しかしそれを指摘されてもまともに受け止めることなく、あまつさえ逆ギレではいかんともしがたい。最初に声をかけた時に反省してくれたなら良かったんだけどな・・・つーか、こうなっては話しても時間の無駄でうざいことこの上ない。俺はとっとと会話を切り上げるべく、「他のお客さんの迷惑になりますからもうよしましょう」とか「とりあえず落ちついたのでいいじゃないですか(俺が漫画雑誌のことを指摘しておっさんが鞄にしまった時点で圧迫はなくなった)」とか努めて丁寧に応対しているにも関わらず、「なにがとりあえずじゃ」などとキレた説教(と当人は思っているのだろう)を続けるのだった。
 結局、終点に着いておっさんが俺をにらみながら降りていってこの事件は終わりなわけだが、やれやれだ。

 まあ、以前の俺ならおっさんにムカついて(行動に移すかどうかは別として)「こいつ粛清したろか」と思ったのだろうが、今日は全然そんなことはなかった。なんか「このおっさん、色んな意味でダメだな」と哀れみを感じたのと、珍奇な動物を見ているような「なんか言ってるな」というぐらいの感想ぐらいしか持たなかった。ああ、もちろんウザいとも思ったのだけど。これはたぶん俺自身に余裕があるということなのだろう。大人になって丸くなるということかもしれん。
 ――ただ、10分ほど朝の貴重な睡眠時間を削られたのと、しばらくおっさんの感触が体の左側に残って気持ち悪かったのは少し腹が立つがね!!

 
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