「サウンドノベルの十則」の段(2003.4.3)


 今まで多くのノベルゲームをプレイし、小説を読んできた経験から「サウンドノベルの十則」を制定してみようじゃないかというのが今回の試みである。もちろんこのルールに従っているから面白いというわけではないし、ルールに合っていないからダメというわけではない。つまり、準則というか一般論としての理想論を提唱してみようということなのだ。もし、今からサウンドノベルを作ろうという人がいれば参考ぐらいにはなるのではないかと思う。それでは少しでも興味のある方は以下の文章をお読み下さい。異論もありましょうが、これが私なりの「十則」です。

1、文章だけでも状況がわからなくてはならない
→サウンドノベルはあくまでも音や画像によって想像力を刺激する「小説」である。これを画像を表示したり効果音を鳴らすことによって描写を省略したりしては本末転倒であり、「小説」としては不完全なものとなる。音や画像はただの味を引き立てるスパイスでメインではないことを忘れてはならない。

2、一人称のサウンドノベルの場合、話者が変わってはならない
→サウンドノベルは感情移入しやすいように主人公の一人称という形式で語られるのが一般的。だが、突然別の人物の視点から語られたり、いわゆる神の視点である三人称が混じってしまっている作品が意外に多い。しかし、一人称の小説では話者が文中で変わることは通常ありえない。主人公が知らないことはプレイヤーも知ることができないのが基本なのだ。ただし、例外的に明確に章立てがわかれており、章ごとに話者が交代するという場合はアリかもしれない。

3、選択肢は主人公の行動以外のものであってはならない
→ゲームとしてのサウンドノベルの本質は主人公の選択をプレイヤーが選択することにより物語に変化を与えることにある。だから主人公が選択することのできない他者の行動や事実関係をプレイヤーが選択できるべきではない。

4、物語は選択肢の内容以外の要因によって変わってはならない
→ありがちなのだが、ある行動を選択するとそれとまったく関係の無い次元の事実が確定するというパターンがある。極端な例えだが、朝食をごはんにするかパンにするかの選択で天気が晴れか雨かが決まるというようなことである。「3」と同じことを繰り返すが初期設定は確定していて、それに選択を加えることで変化を与えるのがサウンドノベルの本質なのである。
 
5、選択の結果は予測できなければならない
→例えば敵におそわれて右に避けるか左に避けるかで結果が変わる、という場合は生じる結果について事前にヒントが示されていなければならない。勘で判断しなければならないのはリアルなのかもしれないが、あえて言えばサウンドノベルにおいてリアルである必要などないのだ。勘で選ぶしかない選択肢で即死エンドなんてのはただの不親切。また、「4」で示したように因果関係の説明できない物語の変化はよろしくない。因果関係が薄い場合は因果経過に関する説明は最低でも必要だろう。
なお、誤解の無いよう書いておくが、予測できるべきなのは「結果」ではなく「経過」である。「なぜそうなるのか」が説明できる選択肢であるべきだ、ということである。

6、物語の結末において主人公は成長を遂げていなければならない
→これはサウンドノベルというより物語一般に言えることだが、物語の終わりには主人公に何らかの変化があるべきである。一連の出来事を経ることで主人公は最初の段階から「一皮むける」ことが望ましい。例え「日常に戻る」という結末であっても、何も無かった頃に戻れるというわけではないはずだ。なお、成長は肉体的なものよりも精神的な成長の方が望ましい。

7、主人公は「普通の」人間でなければならない
→主人公はあくまでもプレイヤーの分身なので「普通の」人間であるべきである。ただし、これは主人公が特別な存在であることを妨げない。つまり主人公は超能力者でも無敵の不良学生でもアンドロイドでもかまわない。重要なのはその思考や行動理念が共感できるものでなければならないということである。ありえない行動しか選択肢がないのは、ギャグのネタとして以外は不適当である。

8、結末は複数用意されなければならない
→これは異論のあるところであろう。確かに選択肢のない「読むだけ」の作品にも素晴らしい作品はたくさんあるし、むしろ物語に専念している分だけ物語の質が高い場合も多い。だが、それでもあえて複数の結末を求めたい。
サウンドノベルを「演出効果の付加された小説」と捉えれば選択肢がなくても構わないのだろうが、せっかくコンピューターという媒体を利用しているのだから、選択肢を選択することで物語に参加できるというメリットを生かさない手はないと思うのだ。そして選択肢で物語に変化を与えられるのであれば、結末が一つだけでは意味がないと言ってもよいだろう。

9、張られた伏線は消化しなければならない
→全ての結末を見て、それでも物語に謎が残っているようではいけない。特に超常的な出来事が起こっているという設定の場合、「何故それが起こったか」「何故その出来事でなければならなかったか」などが説明されなければならない。

10、全ての結末で手をぬいてはならない
→いわゆる「即死エンド」のように、選択肢を間違えたからゲームオーバー、正しい選択をして本筋の物語を読んでください、というのは結局話が一つしかないに等しい。バッドエンドでさえも本当に書きたいエンドと同じだけの力を入れて描写されなければならない。


 あまりねりあげた物ではないので順番などもバラバラで重要さもまちまちだが、これが私なりの十則である。
 細かい点をあげれば「繰り返し読ませる類の作品には早送り機能が必要」「選択肢の場面でセーブができるべき」「最後まで読んで初めて意味がわかるのも悪くはないが、その場合は途中で投げ出されない工夫が必要」「恋愛要素はなくてもよいが、あると盛り上がる」「全てのエンドを見ると特典がある方が楽しい」「閉ざされた空間からの脱出ネタにたよりすぎない」「複雑な構成の場合、攻略も用意しておくべき」「違う結末を見たい時はどの選択からやり直せばよいかわかるようにすべき」「無意味な選択肢はおまけ心かもしれないが、プレイヤーにとっては惑わさせられるだけの存在」「キャラの絵はあっても影絵まで。それ以上は想像力をダメにする」「BGMなのか、物語の中で実際に鳴っているとされる音楽なのかは区別できるようにすべき」「物語中において主人公は重大な決断をせまられ、その決断をプレイヤーが選択できるようにすべき」なども言うことできるが、ここでは十則には含めなかった。

 さて、どんなもんでしょ?

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