「肉体和楽器」の段(2003.2.2)


 皆さんは肉体が楽器になることをご存知のことと思う。
 だが、口笛にしかり、指パッチンにしかり、タップダンスにしかり、どれも西洋音楽のイメージが強く、和楽器との印象はない。
 しかし、我々の肉体には和楽器が隠されている。
 それこそが肉体和楽器「舌鼓」である。

 「舌鼓」を知らない者がいるとも思えないが、それは舌を上あごに引っ掛け、それを弾くように下あごに打ちつけることで音を鳴らすというものである。その鋭く高い響きはまさに鼓そのものであり、加減によっては音程を変えることも可能であり、プロならば舌鼓で一曲演奏することも容易なことに違いない(なんだプロって)

 さて、かように立派な楽器を我々は有しているわけだが、これは軽軽しく演奏してよいというものでもないのである。古来より「舌鼓を打つ」という行為は「美味いものを喰った時に行う」と相場が決まっているのである。
 ふらっと入った食堂でラーメンが美味ければコン、家のカレーが美味ければコン、とにかく美味いものを喰った時には舌鼓を高らかに響かせるのが作法というものである。
 それこそ味皇様や海原雄山、北大路魯山人にいたるまで、美食家は必ず毎食コンコン音を鳴らしているのである。
 音と肉体と食が一体となった、なんと美しい日本の作法であろうか。

 現在はこの美しき伝統も廃れてきているが、今こそ我々がこの伝統を受け継ぐ時なのである。
 さあ、今こそカウンターに座って一口食べ、舌鼓を打つ時なのだ。それこそが料理人に対する最高の賛辞なのだから。

 だが、油断すると「今、舌打ちしやがったなこの野郎」ってことで店をつまみ出されるから気をつけろ!!

 
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