「Letter From China」の段(2002.8.22)
娘から初めて手紙が届いた。
なんかこうしてみると、物語の始まりみたいでドキドキする(月島?)
で、さっそく英訳文を日本語に訳してみた。
どうやら僕が最初に送った手紙が届く前にこの手紙は書かれたらしい。行き違いになったようだ。
システム上手紙が届くのに1〜2ヶ月かかるのだからしかたがないのかもしれないが。
内容はどうやら周りのこととか家族のこととかあたりさわりのないことのようだ。
――一部、英訳文のアルファベットが読み取れない・・・字、汚すぎだよ。メモじゃないんだからちゃんと書けよなっと。
しかたない、幸い中国語だから漢字を見ればだいたいのところはわかる。後は自力でなんとかしよう。
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・・・・・・なんじゃこりゃぁ!(優作風に)
これはかなり、優しい俺でもぶち切れ寸前になってしまった。許せんよなぁ、こいつは。
なんと英訳者が勝手に内容を改ざんしてやがったのだ!
彼女は「第二次大戦中に日本が中国に攻めて、南京で33万人も殺した。でも今、自分を援助しようとしている。自分の援助者が日本人だと知って困惑している」というような内容を書いていた。
僕は彼女がそう思うのは無理もないことだと思う。一般的な中国の人の対日感情はそんなものだろうという予想もつく。
しかしだ、英訳文にはそんなことはまったく触れられておらず、それどころか「あなたが日本人だと知って驚いています。あなたの援助にはとても感謝しています。このことは永遠に忘れません」ときたもんだ。
まったく笑えない冗談だ。
もしも僕がこの英文を真に受けてこの後も脳天気な手紙を出しつづけていたらと思うとぞっとする。
方針としてなるべく政治的な話題は避けるということは理解していた。ただし、それはあくまでこちらが出す手紙についてはということだ。向こうから振ってくる話題に対しては無視するわけにもいかないだろう。
だが、連中は勝手に手紙の内容に手を加えやがった。これでは事実上の検閲だ。いや、公権力じゃないから検閲じゃないか。ともかく通信の自由が大いに制約されていることは間違いない。まだ墨塗りの方が明らかに改変が加わっていることがわかるだけかわいげがあるぐらいだ。
連中には厳重に抗議して、二度とこんなことがないようにしてもらう必要がある。嘘で塗り固めた交流になんの意味があるというんだ? 僕は日本が責められたからといって機嫌を損ねて援助をやめるような男ではないし、ただの都合のいい連中の金づるになるつもりもない。やるからにはとことんだ。関わってしまった以上、僕は最後まで彼女を応援するし、たとえ一生会えなくても心を理解しあいたいと思っている。
まずは彼女に僕の考えを伝えなければならない。かつて盗塁王君相手には失敗したことだが、お互いを偏見をもって見たり、最初からステレオタイプに憎んだりせず、お互いをわかりあえる存在だと認識すること、友愛の心を彼女に伝えなければいけない。
僕と彼女は手紙でしかつながっていないけど、いつかわかりあえると信じている。ただ、そのためには僕の手紙を正確に翻訳してくれることが必要だ。本当、頼むぜ。
さもなきゃ僕は中国語で手紙を書かないといけなくなる。伝えるのを諦めるという選択肢はないからな。
僕にはささやかな夢がある。彼女は将来教師になりたいそうだが、その夢が叶って、教え子達に自分が少女時代に知りあった一人の日本人のことを語る日がくることを。そして日本人がみんな鬼だなんて思ったり、敵だと思ったりすることがどれだけ馬鹿げているかを教える日がくることを。
これはまだ夢だけど、いつの日かきっと実現する。嘘じゃない。本当だ。