「お化け屋敷」の段(2002.3.14)


 なんの脈絡もないが、今回はお化け屋敷の話だ。
 それというのも先日の某遊園地でのお化け屋敷が腰が抜けるほど怖くなかったので、だったらどういうのが怖いだろうかということを時々考えてしまうのだ。
 あんまりそういうことを考えていても建設的ではないので、ここにひとまず書いてすっきりしてしまおうというのが今回の趣旨である。

 まず、考える上での条件が必要だ。よっぽど栄えている遊園地でもないかぎり、お化け屋敷ごときに人件費はさけないので臨機応変に対応できる人間を使って怖がらせるというのは禁じ手とする。要するに機械仕掛けでなければならない。それに加えて、暗闇に段差があるとか濡れたものが突然顔にあたるなども効果的だろうが、後で苦情が来るようなものも禁じ手としなければなるまい。ルールとしてはこんなものか。

 私がまず提唱したいのは「ドア」である。
 これはくだんのお化け屋敷で仕掛けが「動きっぱなし」だったために興ざめしてしまったのを回避することを第一の目的とするものである。
 すなわち、ドアの開閉と仕掛けを連動させることによって、効果的なタイミングでの仕掛け発動が可能になるのである。さらに「ドア」は自分が探索しているという気分にさせる効果やドアの向こうに何があるのかわからないという不安感を掻き立てる効果も期待できるのである。

 次に、暗いお化け屋敷の場合は客に懐中電灯を持たせることを提案したい。もちろんその場合は場内は真っ暗にしておく。こうすると自分が当事者であるかのような感覚が味わえることだろう。シチュエーションとしてはドアを開けて中を照らすと人のような物が首をつっていて、だんだん上を照らすと人形であることがわかる――といったような形だろうか。

 ここで先程「暗い」と言ったのには訳がある。
 私が真に提唱したいのは「明るいお化け屋敷」なのだ。

 もちろんそれはお化けがニコニコしているというのではなく、「見えているのに見えない恐怖」こそが本当に怖いのではないかというコンセプトの話である。
 もはや暗闇におびえる時代は終わったのだ。

 ここから先は私のイメージする怖いお化け屋敷を書いていくことにしよう。
 お化け屋敷のイメージは洋風の古い民家を模していることにする。
 まず、入場するまでであるが、あまり人数が多いと怖くないので一度には入れる人数は制限して、1分か2分おきぐらいに入ってもらう。
 入ってもらうまでに空き時間が出来るだろうから、そこはパネル展示などで気分を盛り上げてもらう。具体的には、このお化け屋敷は実際に起こった猟奇事件の現場を模して作られたもので、もともとはアメリカの遊園地にあったものだが発狂者がでたために閉鎖されたものを移築したものであるとか書いておくわけだ。もちろん白黒写真だとか、猟奇事件の概要、それを書いた新聞記事なんかもでっちあげて飾っておく。

 で、中に入ってからはドアを開けるごとに何か仕掛けが起こるわけだ。
 ちなみに内装は事件当時そのままというコンセプトなので「平和な家庭そのもの」である必要がある。そこに血のシミをつけたり人型に白線を引いたりするかは、まあお好みでというところだろう。
 基本的なテクニックとしては「音」が重要な要素となる。

具体例1:どこからともなく聞こえてくる子供の笑い声。ここで注意するべきなのは「笑い声」である点である。うめき声などの場合はかえって興ざめしてしまう可能性が高い。

具体例2:部屋に入るといきなり鳴り出す電話。受話器をとると何かが聞こえてくるわけだ。私の場合は意味不明の呪文のようなものが不気味で嫌だが、お好みで「殺してやる」とか「いっしょに遊ぼう」とかでもよい。受話器をとろうとしない場合は一度切れ、再度かかってくるのが望ましい。小細工として電話線がぶらさがっててどこからもかかってくるはずがないという演出があるほうがいいだろう。

具体例3:しゃべる人形。注意すべきは不気味な人形ではなく市販されているようなかわいい人形でなければならないという点だ。具体的には部屋に入ると同時にドアの影から「ワタシリカチャンイッショニアソビマショウ」とかしゃべりかけてくるわけだ、そんで何だ人形かとほっと息をついたとき、突然声にノイズが入って野太い男の声で「殺してやる」とか呪いの言葉を言ってくる。そんでまた突然もとの人形の声に戻る――すんげぇ嫌な感じでしょ。もちろんアメリカの猟奇事件にそんな人形があるわけないが、バカな客にはわからないはずである。

具体例4:隣の部屋。部屋に入ると隣の部屋から悲鳴が聞こえてくる。悲鳴が助けを求めながらこっちの部屋へ通じる壁を叩く音が聞こえる。同時にチェーンソーのような音と振動も伝わってきて、やがて断末魔とともに急に静かになる。ここでも既に嫌な感じなのだが、いきなり悲鳴の聞こえた部屋に通じるドアがノックされる(もちろん構造上そのドアを開くことは出来ない)。ノックが一瞬やむと、ドアノブががちゃがちゃ回され誰かが入ってこようとする。さらにドアを激しくたたき出す――すると次の部屋へ通じるドアのロックが外れて先にいけるようになるってな感じでどうだろうか。

具体例5:血まみれの部屋。これは「音」ではないが、一番の自信作であり、「明るいお化け屋敷」の特徴を最も生かした仕掛けである。具体的には部屋に入る――するとその部屋は何の変哲もないただの部屋のように見える。ところが突然の停電。暗闇の中で客はちょっとしたパニックに陥るが、すぐに電気がつく。しかし、そこに広がっているのは壁、床、天井に至るまで血の後らしきしみや赤い手形などで埋め尽くされ、自分がその真っ只中に立っていることに気が付く――これは怖い。何しろ自分の見ていたものが信じられなくなるというのは相当な不安感をあおること間違いなしだ。仕掛けとしては特殊な塗料を使って描いておいて、最初の電灯では見えないが停電後の電灯では見えるようにするだけという単純な仕掛けだが、明るくてよく見えるがゆえに怖いという最上の仕掛けだとも思う。

 こういう所に入って楽しいかどうかは別として、怖いお化け屋敷ってのはこんな感じではなかろうか。
 もし、こんなの全然怖くないとかもっと怖い仕掛けがあるとか言う人はぜひ教えてもらいたい、私の想像力なんてのはこの程度のものなのだ。
 個人的には目のつけどころは間違ってないと思うんだけど・・・

前のページ