「似顔絵」
「うぇあぁっ?!」
なんとなくテレビを見ていた俺は思わず叫んでしまった。
といっても俺の見ていた番組はホラー映画なんかではなく「緊急特番!FBIの認める超能力者があの事件の真犯人を透視!今夜あなたは目撃者になる!」というどこまでがタイトルでどこからがサブタイトルなのかよくわからないよくある2時間ものスペシャルである。毒にも薬にもならないくだらない番組ではあるが、似たような番組で本当に犯人逮捕に結びついたこともあるし、テレビの影響力というのは馬鹿にならないものだ。
それはともかくとして、コンビニの弁当をパクつきながらテレビにいきなり自分の顔が映し出されて驚かない人間はいないのではなかろうか――特にそれが犯罪事件の真犯人としてであった場合には。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
俺は思わず独り言を言いながらテレビににじりよった。間違いない――通った鼻筋、切れ長の目元等々・・・どのパーツをとっても俺そのものだ。
「え〜、こんな人が犯人なんですかぁ? いっが〜い」
テレビではスタジオに画面が切り替わって頭の悪そうなゲストがコメントしている。
畜生、「こんな人」で悪かったな。俺にとっては意外なんて一言で済むような問題じゃないのに勝手なことを言ってやがる。下手したら通報されて真犯人にされちまうんだぞこっちは! くそっ、どうすりゃいいんだ、考えろ、考えるんだ。
俺はテレビに向かって毒づきながらとりあえずあぐらを組んで腕組みをしてみた。こういう場合は形から入ったほうがいいのだ。
冷静に考えてみなければ。――それにしてもなんで俺の顔を超能力者が透視したんだろう。どっかでこの外人の恨みをかっていてその仕返し? いや、俺はこんな外人の知り合いはいない。だとするとたまたまどこかで俺を見かけたこの外人が適当に俺の人相をしゃべっているのか? それとも、一番考えたくないことだが、実は俺は二重人格か何かで知らない間に本当に犯罪を犯していたりするのだろうか?
と、そこまで考えた時、俺は重大なことに気がついた。注意して見ていなかったので、自分が何の事件の犯人として紹介されているのかがよくわかっていなかったのだ。
あらためて番組をよく見てみると、どうやら俺(仮)は半年ほど前の殺人事件の犯人らしい。ん、待てよこの日付は――
俺はあわてて手帳を鞄から引っぱり出し、該当するページを探し当てた。
「あ、やっぱり」
俺は安堵のため息をもらした。その日はゼミの皆と一緒に旅行に行っていたのだった。場所も犯行現場からは遥かに離れているし、物理的に俺に犯行は不可能だ。
そうだ、こういう場合には証人を確保しておくのがセオリーというものだろう。俺はゼミの友人の吉田に電話することにした。
「もしもし、何か用か?」
電話をかけるとすぐに本人が出た。携帯にかけているので俺からの電話であることはわかっているはずだ。俺はさっそく本題に入った。
「今、どこにいる?」
「? 家だけど」
「じゃ、テレビつけてくれ。10チャンネルだ」
「ちょっと待ってくれ。――つけたぜ」
「つまり、そういうことなんだ。俺がその日お前と一緒にいたってことを証言してくれるよな」
「・・・・・・・」
「お、おい、『うん』と言ってくれよ」
「・・・いや、何を言ってるのか話がつかめないんだけど」
吉田の煮え切らない態度に俺は声を荒げた。
「テレビ見りゃわかるだろ! 俺がその事件の犯人だって超能力者に透視されちまったんだよ! だから、犯罪の起こった日は一緒にゼミの旅行に行ってたって証言してくれって言ってるんだよ!」
「・・・・・・・」
まずい、怒らせちまったか? 証言者を失うのは大いに困るぞ。
「あ、いや、すまん。言い過ぎた。俺は今かなりあせってるんだよ、だから頼むよ、なっ」
「わははははははは」
「!!」
俺がなだめようとすると、突然電話の向こうで吉田の笑い声が響いた。そしてひとしきり笑い終えると吉田は俺に言った。
「大丈夫、たぶん証言する必要はないぜ」
「・・・何でだよ」
「だってお前、この似顔絵みたいに男前じゃないだろ」
<END>
あとがき
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