「メロス」
昔々、ある所に他人を信用しない王様がいました。王様はいつも自分の命が狙われていると疑心暗鬼にとらわれていて、家族や大臣、一般の国民まで次々に処刑して恐れられていました。
そんなある日、メロスという一人の男が王様暗殺未遂の疑いで捕らえられ、処刑されそうになっていました。
「お願いです、王様!! 私は無実です。どうかお助けください」
「ならん。お前はわしの命を狙ったであろう。処刑する」
メロスの弁解にも王様はまったく聞く耳をもちません。
そこで、メロスは情に訴える作戦に出ました。
「私のたった一人の妹の結婚式が明日あるのです。処刑するのならばせめて妹の結婚式に出席してからにしてください、お願いします!!」
「ならん。そんなことを言って、そのまま逃げてしまうつもりであろう」
やはり王様は聞く耳を持ちません。
もはやメロスの命はこれまでなのでしょうか。と、絶望に打ちひしがれたメロスとギャラリーの一人の目が合いました。
「王様!!」
「なんじゃ?」
メロスは先程目が合った男をビシッと指差し、
「あの男を私の代わりに置いていきますから妹の結婚式に行かせて下さい」
無茶苦茶な要求である。しかし、王様は考えました。
(ここでメロスが命惜しさに逃げ出せば、人間なんて信用できないということを国民に知らしめることができるな)
「よかろう。その者をひったてい!!」
「うわっ、な、何で!? やめてくれえぇぇ」
王様は無関係な男を兵士に命じて連れて来させました。
「それではメロス、3日後の日没までにお前が帰ってこなければこの男をお前の代わりに処刑しよう。むろん間に合えばその時はお前を処刑するぞ」
「わかりました。王様」
「勝手に話を決めるなあぁぁぁぁ!!」
男の魂の叫びも虚しく、メロスは自分の村へと旅立っていきました。
そして3日後、もうすぐ日が沈もうとしているのにメロスが処刑場に現われる気配はありません。
王様は嬉しそうに磔台にしばられた男に話し掛けた。
「どうだ。やはりあのメロスとかいう奴は帰ってこんではないか」
「いえ、メロスはきっと来ます!」
男はきっぱりと言いました。これが信頼と言うものでしょうか。
「っていうか来なかったら末代まで祟ってやります!!」
どうやら違ったようです。
そうこうする内にもはや太陽は一筋の光線となって今にも消え去りそうになっていきます。
「もうこれ以上待っても仕方あるまい。さっそく処刑を――」
王様が処刑開始を宣告しようとしたその時、処刑場の入り口から大きな声が響きました。
「ちょと待った!!」
メロスです。メロスは約束通り、日没までに帰ってきたのです!!
メロスは幾多の困難を物語るボロボロの衣装で夕焼けをバックにゆっくりと王様の下へ歩いていきます。まるで映画のワンシーン、演出効果はばっちりです。
「お、おおっっ」
王様の驚愕の表情を見たメロスは内心ほくそ笑みました。
(何もかも計算通りだ。王様が勝ったと確信した瞬間に登場して、王様をどん底へと突き落とす。これで根底から価値観を破壊された王様は改心して命を助けてくれるだろう。これからの人生ずっと逃亡生活なんてやってられないからな)
「王様、ただいま戻りました」
メロスは何食わぬ顔で王様にうやうやしく一礼します。
「メロス!!」
王様は感極まったようにメロスの手をガッと両手で握りました。
「メロス、今までのわしは間違っていた。人を疑うことしか知らず、信用することをしなかったのだ」
「王様・・・・・・」
「メロス、わしはお前に教えられた。信頼を、約束を守ると言うことを――わしもお前との約束を果たそう。メロス、お前を処刑する」
あたたかい拍手の中、メロスの処刑は行われた。
その後、改心した王様の下で王国は末永く繁栄したそうである。
ありがとうメロス!! さようならメロス!! 僕たちは君の勇姿を決して忘れないだろう!!
<完>
あとがき
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