「やっぱり犬が好き?」

 世の中の人間というものはおおむね2種類に分かれるらしい。
 すなわち犬派と猫派である。
 犬派の人間はペットは犬しか認めないし、猫派の人間はペットは猫しか認めない。
 そして、お互い「なんであんな可愛くないペットと暮らすんだろう」と思っているのだ。
 これだけ価値観が正反対なのだから、当然ペットの話になると口論になることもしばしば――

「だから、ペットにするなら犬だって!!」
「犬なんかのどこがいいんだよ。猫の方がいいに決まってるじゃないか!!」
 ここでもまた、犬派と猫派が争っている。ちなみに名前は、犬派が犬山で、猫派が猫田である。言っておくが、けっして筆者が名前を考えるのが面倒だったからではない、たまたまそういう名前なのだ。
 犬山と猫田は普段は親友と言ってもいいくらい仲がよいのだが、ひとたびペットの話になると、お互いに親の仇のように憎みあってしまうのである。
「犬はいいぞ。犬は人類の最良のパートナーといっても過言じゃない。番犬、狩猟犬、麻薬犬、イヌゾリ――どうだ、猫におんなじことができるか?」
 と、犬山が言えば、
「そんなの単なる都合のいい奴隷じゃないか。ペットは役に立たなくても可愛ければそれでいいんだよ!!」
 と、猫田が返す。万事この調子である。
 猫田の返事を聞いた犬山は馬鹿にした調子で言った。
「そうだよな〜、バカな子ほど可愛いって言うもんな」
「なんだとぉ」
「犬は猫と違ってかしこいもんなあ。お手、おすわり、おあずけ――犬はなんでもできちゃうもんなあ、猫と違って」
 得意げな犬山にたいして、猫田はふんっと鼻で笑って、
「まったく犬好きは頭まで犬並だな」
「なにぃ」
「猫はそんな芸なんてやらないんだよ、できないんじゃなくてな。猫は犬みたいな奴隷じゃなくて自由なんだ。人間の言いなりにならない、でも可愛い、この小悪魔的な魅力がわからないなんて憐れな奴だ」
「うむむむむ」
 犬山は猫田の主張にうまい反論が思いつかず、言葉につまってしまった。
「ど〜だ、猫の方がすばらしいってことがわかっただろ」
「い、いや、ちょっと待て」
 このままでは完全に言い負かされたかっこうである。
 調子にのった猫田はなおもつめよってくる。
「ほれほれ、おとなしく猫の方が犬よりもいいってことを認めなよ。は〜い、りぴ〜と、あふたみ〜『最高のペットは猫でございます』、ほれ、続けて言ってみよう」
 その時、天啓のように一つの反論が犬山の頭に浮かんだ。
「いや、最高のペットは犬だ!!」
「!!」
 突然の犬山の反論に、既に勝ったと思っていた猫田は驚愕した。
「どういうことだ!? 猫の小悪魔的魅力に人間のいいなりになるしか能のない犬が勝てるというのか!!」
「ふっ、家で飼ってる犬はその弱点を克服した」
「ば、馬鹿な・・・・・・」
 そして、犬山は高らかに宣言したのだった。
「ウチの犬は俺の言うことなんてさっぱりきかないぜ!!」

<終劇>

あとがき

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