「読者への挑戦状」

  作者自身は推理小説を読むにあたって、ストーリーが終局に近づき、解決の章が目前にせまっても頁を閉じることなくそのまま読み進めてしまう。にも関わらず、真相がどうなのかをロジックの操作で発見しようと試みることは興味津々たる作業であり、刺激的な頭脳の体操である……推理小説という文学的珍味を愛好する美食家の多くは<読むこと>と同時に<推理すること>にも興味を持たれるものと信じて、作者はスポーツマンシップに則った「読者への挑戦の言葉」を我が親愛なる読者諸君に投げかけたいと考える。読者よ!――メールの送り主は誰なのか? と……推理小説の愛好家のあいだにも、事件の真相をもっぱら直観の盲目的な作用で<推量>しようとする傾向が顕著に見られる。これがある程度避けがたい現象であるのは認めるが、しかし、ロジックと常識を適用しての推理作業が、より大きな楽しみの源泉である……作者はちょっとためらいつつ、そのように明言する。推理小説?「Iの悲劇」はこの段階までに、真相の発見に必要な事実の全部を、読者の前に提示した――はずである。読者諸君がこれまでの叙述を、周到かつ綿密に精読されるときは、これから展開する解決の章の内容を、誤ることなく予想なさる――と思うんですが、ダメですかね?(笑) ではご努力のほどを!


※注:この「読者への挑戦状」はエラリー・クイーンの「フランス白粉の秘密」のたちの悪いパロディです。元ネタの著作権は当然ながら尊敬するE.Qに属することを明記しておきます。ごめんなさい。

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