「ロール・プレイ」
「はい、レポーターの早川です。皆さんは『ロール・プレイ』という言葉をご存知でしょうか。日本語に訳しますと『役割を演じる』という意味になるんですが、この一種の『ごっこ遊び』を取りいれたユニークな授業が、ここ太駆小学校で行われています。様々な役割を演じることで色々な立場を知り、お互いに理解しあうことの大切さを学ぶというこの授業、果たしてどのようなものなのでしょうか。それでは、今から実際に役割を演じている子供達にインタビューしてみようと思います」
「三国人はこの国から出ていけ! お前達がいるから犯罪が増えるんだ! 50年以上も経ってるのに戦争のことを持ちだすなんて頭おかしいんじゃないのか?」
「君は何を演じているのかな?」
「はい、自分の存在に誇りを持てないので、愛国者を自称して他の人をおとしめることで安っぽいプライドを満足させている人生の敗北者です」
「ゲームばっかりしてないで勉強しなさい! いい学校に行って、いい会社に入るのがあなたの幸せなの。ママはあなたのことを思って言ってるのよ」
「君は何を演じているのかな?」
「はい、私は自分の願望を子供に押しつけるだけで子供自身の幸せについて真剣に考えたことのないバカな親を演じてます」
「俺はオタクじゃない、ただのマニアだ! オタクなんかと一緒にしないでくれ!」
「君は何を演じているのかな?」
「傍目からは似たようなものなのに、差別して見下すことでなんとか『自分は違う』と必死でアピールする一番しょっぱい奴です」
「信じる人は来たるべき終末の日に救われます。さあ、財産を寄進して世俗を捨てるのです。あなたの平穏はここにしかないのです」
「君は何を演じているのかな?」
「はい、自分自身は欲まみれなのに、他人には欲を捨てるように言って財産をだまし取る教祖です」
「――このように、子供達は自分達なりの解釈で役割を演じています。子供達の素直な観察力には驚かされるばかりです。大人は『子供には何もわからない』と思いがちですが、子供達はしっかりとその純粋な瞳で大人の姿を見ているのです。子供達の『心の教育』が問題となっている今、大人がしっかりした姿を見せることができていない現状がその原因の一つとして浮き彫りになった形です。この社会の縮図と化した教室で学んだことは子供達の成長にどうのような影響を与えるのでしょうか。この取り組み、今後の行方に注目です」
「お、早川、お前は何を演じてるんだ?」
「はい、先生。私は事実を伝えるような顔をして自分の意見を押しつけるだけのマスコミをやってます」
<終>
あとがき
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