ハミルトン亭の迷惑天使
エピローグ
騒ぎがあってバイトを首になった次の朝。
いつも通り、寝ぼけた顔を洗っていると、声をかけられた。
「おはようございます」
見ると、ピオーネが柔らかい笑みを浮かべて、立っていた。
「おはよう」
どう答えていいかわからず、無難な挨拶を返すと、ピオーネは苦笑を浮かべて見せた。
「そんなに警戒しなくてもいいですよ。あなたの言いたかったことはわかっています」
「そうか」
「それでも、弱い者を守ることは、大切なことだと思うのです」
「…お前の言いたいことも、少しはわかっている」
答えながら、宿の姉弟を見る。
ピオーネもその視線を追って、今度は笑みを浮かべてきた。
「そうですね。あなたにわからないはずがありませんね」
その微笑みは、まさしく天使の微笑み。その笑みのまま、さらに続ける。
「アルバイトがないなら、私の店を手伝いませんか?」
「それはイヤだ」
即答して、半ば走るように、レシウスは食堂へ消えていった。
「なんで逃げるんですかー!」
叫びながら走ってくるピオーネに、レシウスは胸中で言い返す。
(お前みたいな植物マニアと仕事ができるかー!)
(珍しく正論ねー)
相棒の同意を受けながら、レシウスはハミルトン亭を飛び出した。
外は今日も変わらず、晴れている。
おしまい