2012年度 剱岳夏合宿 行動記録 - ACKU 神戸大学山岳部

【メンバー】
CL:間瀬(3)、 松尾(2)、 SL:溝畑(4)、 坂本(M1)、 北村(3)、 松村(1)、 山内(1)、 山本(1)、 吉澤(1)、 OB岩澤 

【日程】
8月18日~8月27日

文責:間瀬(3)、松尾(2)

8月18日(土) 晴れ時々雨 アプローチ

電車組(松尾、溝畑)と車組(坂本、北村、松村、山内、山本)に分かれてアプローチ。松尾寝坊する。北村が行動食を買い忘れていたが立山駅近くの売店で調達できた。新入生の装備を事前に確認すべきだった。坂本が風邪気味だった。

8月19日(日)

坂本、北村が別山乗越の登りで遅れる。坂本は体調に問題があり、北村は体力不足だ。事前に歩荷トレを行うべきであった。剱沢の診療所で、坂本が下山勧告を受ける。ここで急遽予定を変更し、北方稜線を中止し翌日は剱岳を一般道から登ることにする。午後は剱沢雪渓でアイゼントレを行う。松村はスパッツを忘れており、山内はアイゼンの調整不足だった。夕食時にペミカンがすべて腐っていることがわかる。そのため翌日は溝畑が室堂に戻り食料調達、残りのメンバー(松尾、北村、松村、山内)は立山三山を縦走するという計画に再度変更する。腐った原因はおそらく車組がザックをトランクに詰め込んでそのまま移動してきたためだと思われる。これから夏にペミカンを運ぶ時は家で冷凍しておき保冷しなければならない。

8月20日(月)
3:30起床。5:00剱沢→5:50別山→6:30真砂岳→7:20大汝山→7:30雄山→9:40剱沢

予定通り立山三山縦走を行う。雄山の頂上(祠のある所)へ上がるには500円納めなければならなかったので諦める。14:00頃溝畑が剱沢に戻ってくる。三日分の馬肉を買ってきたので、カレールーや味噌と組み合わせて問題なく夕食を調理できた。

8月21日(火)
2:30起床。4:00剱沢→4:50一服剱→5:30前剱→7:30剱岳頂上→12:10剱沢

テン場が賑わっていたので朝早くから行動開始するが正解であった。登り時は新入生は大きな落石や滑落を起こさなかった。途中、13番目の鎖あたりで松尾がルートを間違い登り用ではなく下り用の鎖を使ってしまう。溝畑、山内、山本は鎖場でセルフビレイを取りながら進むが、スピード・安全面から見て取らない方が良かった。カニのタテバイ通過中、松村がカメラで写真を撮っていたが危険行為であるので注意した。頂上到着後、北方稜線の偵察をしていたところで岩澤さんと合流。カニのヨコバイも難なく通過。下り時は膝の疲労のためか新入生の落石が増えたので速度を落とし慎重に進んだ。当初は剱沢に戻った後真砂沢へ下る予定だったが、行動時間が長くなったので、真砂沢へは翌日移動することにする。

8月22日(水)

松尾班

このあたりから新入生の食事作りがスムーズになり、パッキングも手早く行えるようになる。岩澤さんとともに真砂沢へ下る。北村は膝の痛みに苦しみ始めた。真砂沢にてテントを張り、松尾、溝畑、松村、岩澤は長次郎谷へ八ツ峰のⅠ・Ⅱのコルに続くルンゼの取り付きの偵察に行く。長次郎の雪渓は例年よりも安定しており、ヒビ割れが少なかった。

間瀬班(アプローチ) 間瀬・吉澤

同じく途中入山の吉澤と2人で18きっぷの旅。途中敦賀で日本三大鳥居のある神社でお参りして、富山でブラックラーメンを食べて、例のごとく立山でステビバ。蚊の強力な奴に刺されるたびに、痛かゆさで目が覚めるのであった(もう1人は全然平気)。虫に好かれるほど元気な体ということにしておこう。しかしまいった。立山駅自体は、水場もトイレもあって快適。

8月23日(木)  晴れ 源次郎尾根アタック

松尾班(源次郎尾根アタック)
2:30起床。4:00真砂沢→5:00源次郎尾根取り付き→11:00Ⅰ峰→13:00Ⅱ峰→19:00真砂沢

天気がいいので、源次郎尾根アタックを1日早める。メンバーは松尾、溝畑、松村、山内、岩澤(北村、山本はBC待機)。取り付いてすぐの大岩はロープを使わずに通過。木の根を掴みながら這い上るように進む。途中のハーケンが打たれていた岩壁でロープを出す。トップの松尾がなかなか進めず大きなタイムロス。灌木帯を抜けたあたりのスラブ状の岩壁で溝畑がロープを要求したのでフィックス。山内、松村、岩澤はロープ無しでも大丈夫だった。ここからはⅡ~Ⅲ級レベルの岩登りが続く。浮石による落石が増えたので進行が遅くなる。溝畑が終わらない岩登りに苦しんでいた。10時の定時交信ではBCとのみ連絡がとれる。予定時間より大幅に遅れてⅠ峰に到着。続くⅡ峰の登りはⅠ峰と比べてかなり容易であった。Ⅱ峰頂上手前で12時の定時交信を行い途中入山の間瀬にⅡ峰懸垂下降後エスケープすることを伝える。Ⅱ峰の頂上手前の大岩のギャップの通過時に安全のためにロープを出したがいらない気もする。このあたりでパーティの集中力が切れたため行動が遅くなる。懸垂下降後に、エスケープルートが存在しないことに気づく。14時の定時交信を行うが、途中から無線がおかしくなってしまい交信が取れなくなる。剱岳頂上から熊ノ岩に下りビバークするという計画で剱岳に登り始めたところ、最初のピークを越えたあたりで長次郎谷側に懸垂下降で下れそうな雪渓を発見し、懸垂下降を行う。ロープワークや支点構築に戸惑うが岩澤さんの力を借りて成功し、長次郎谷を下って真砂沢に帰りつく。八ツ峰下半縦走の中止を決める。

時間がかかった原因としては、
・パーティメンバーが多すぎた
・ロープワークに時間がかかった&ロープ張りすぎ?
・溝畑の登攀力不足
などである。来年はコースタイム4時間で行けるように練習してリベンジを図りたい。また、無線が使えなくなるのも想定外であった。緊急時の対策をもっと詰めなければならない。さらに、本来は吉澤が源次郎尾根に参加する予定であったが、吉澤にはレベルが高すぎた。検討の詰めが甘かったのも反省点である。

間瀬班(入山〜真砂沢のテント場へ) 間瀬・吉澤
9:30室堂 12:00別山乗越 15:00真砂沢ロッジ

始発のチケットを購入し、室堂で1時間ほどぶらぶら高度順応。富山の小学生がちょうど雄山にいくところで、ほほえましい光景であった。コンパスで進む方向をたしかめて進む。雷鳥沢までは、地獄谷からの硫化水素ガスがひどい。通行止めになるのもよくわかる。雷鳥沢の登りは2人とも黙って登る。「暑いなあ」「え、冷や汗ですよ」とかなんとかごまかしながらも別山乗越へ。

剱沢で山頂やら源次郎やらを確認して雪渓を下る。吉澤がアイゼンを前後左右逆に履いていて、あわてて直す。雪渓を歩く上での注意点を教えながら歩くと、真砂沢ロッジに到着。

先発隊が源次郎尾根に行っていたのだが、19:00になってようやく帰ってきた。ご飯作ったり、話聞いたりでうるさくしてしまい、テント場の方々にはご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。11:00就寝

8月24日(金) 晴れ 八ツ峰クライミング

松尾班

この日は間瀬と山本は八ツ峰Ⅵ峰Aフェースへ向かい、松村と吉澤は剱沢へラウンド、残りのメンバーは沈となった。別山乗越で松村は祖父の死の知らせを聞き途中下山することになる。棒ラーメンが足りなくなる。

間瀬班(峰Ⅵ峰Aフェース中央大ルート(敗退)、魚津高ルート(完登)) 間瀬・山本
6:00真砂沢ロッジ 9:30中央大ルート登攀開始 10:20魚津高ルート登攀開始 13:20Aフェースの頭 14:00Ⅴ・Ⅵのコル 15:30真砂沢ロッジ

山本と2人でAフェースを登る。山内も登る予定であったが、前日の源次郎の疲労がたまっていると判断し、休養させる。山本にとっては「ナムの滝」は「ナムナム」、「長次郎谷」は「長次郎たん」らしく、以降、クライミング班ではこの呼び名が定着する。取り付きは、雪渓から熊野岩よりのガレ場の踏み跡をたどり、フェース側の雪渓をトラバースしていった。今年はかなり雪が多いようだ。取り付き近くの岩屋は3~4人座ってビバーク出来そうな感じ。ルートの最初の支点がなかなか見つからなかった。Aフェースは顕著な凹角が2本、上に走っており、左が魚津高、右が中央大ルート。いずれも取り付きは古いハーケンが2本打ってある。

まずは中央大ルートに挑戦。岩屋の右を少し上がると凹角がある。正直、自分の力量では厳しいかな、と思っていたのだが、案の定1P目の終了点7mほど下の地点でテンションし、核心部を越えられる気がせず、撤退した。核心部はスメアリングの連続で、自分のヘッポコシューズでは登れる気がしなかった。プアな支点におそれをなしてしまったのは、余裕で登れるフリーの力がしょぼいということである。ほんとに悔しかった。精神的な怖さも含めると自分にはⅣ+〜Ⅴくらいのグレードに感じた。凹角を登っていくので、恐怖感はないし、カムも時々とれる。登りたかった。
その後、気を持ち直して魚津高と相対する。

1P目 凹角を登って、ハングを右から巻く。巻いてすぐの右手のガバがボコっと外れて、意図せず叫んでしまった。巻いた後は直上。Ⅳ-。登山靴でも頑張ればいけそう。ハング巻く所がかなり怖いけど。
2P、3P目 左のリッジを外れなければ簡単。3P目の直登するフェースは右から巻いたが、見た感じ難しくてもⅣ+くらいだったので、登ればよかった。Ⅲ級。ビレイ支点は古いハーケン。

Aフェースの下降は、頭のすぐ右のハイマツに大量の捨て縄あり。ここから懸垂を2回したのだが、1回目の懸垂はクライムダウン(Ⅲ級)したほうがよい。ハイマツにロープがからんでうっとうしいことこの上ない。10mくらいおりたら2個目のハイマツの懸垂支点あり。ここはカラビナが2枚、複数の捨て縄にかけてあった。ここから、Ⅴ・Ⅵのコルに直接降りられる。浮石は少なく、楽しい懸垂下降を35mほど。

Ⅴ・Ⅵのコルの下降は浮石だらけのガリーで怖い怖い。途中でAフェースの基部に進んで、デポしたものを回収して真砂に帰った。登山靴・ピッケル・アイゼンはデポで構わないと思う。ガリーの下降は10分くらいなので、クライミングシューズでもなんとか降りられるかな?今回はコルで登山靴に履き替えましたが。

しかし、中央大ルートは悔しかった。落ちたらやばいという恐怖心に支配されてしまって、足が全然動かせなかった。そのせいもあってか、魚津高をあまり楽しめなかった。どちらも、凹角を登っていくので高度感はそんなにない。ただ、ガバだと思ってつかむと外れるので、いちいち押して確認しながら登らなければならない。こんなに、登るテクニック以外で緊張を強いられるクライミングをしたのは初めてだった。とはいっても、やはり頭に出た時の達成感は素晴らしかった。源次郎尾根を横目に、雪渓を見下ろしてクライミングするのは、ゲレンデでの練習とは違い、ああ、これが本チャンの岩場なんだなあ、と感じさせるには十分であった。大げさではあるが、たしかに岩場を踏みしめる肉体が存在し、高揚する精神を意識し、生を実感できる気がした。この感覚は、クライミングでしか味わえない気がする。ただ、このときは結構頭は冷えてて、クリアーだった気がする。もちろんやりとげた感覚はあったのだが、さあ、降りようという気持が強かったのであろうか。入門ルートでさえ、この達成感なのだから、もっと難しいルートを登ったら、どうなるんだろう。

8月25日(土) 晴れ 長次郎谷経由剱岳アタック&八峰Ⅵ峰Cフェース剱稜会ルート&池ノ平山ラウンド

この日は松尾、岩澤は長次郎谷を詰めて剱岳アタック、間瀬、山内、山本は八峰Ⅵ峰Cフェース剱稜会ルート、溝畑、北村、吉澤は池ノ平山までラウンドを行った。

長次郎谷経由剱岳アタック班 松尾、岩澤
4:00真砂沢→8:00長次郎の頭→8:30剱岳頂上→12:00真砂沢

熊ノ岩から左俣を進む。雪渓が割れている所は右端の岩場を渡りながら長次郎の頭に到着。剱岳頂上までは軽いクライミング。浮石の溜まり場である。あるパーティは下り時に思いっきり落石していた。

八峰Ⅵ峰Cフェース剱稜会ルート班 間瀬、山内、山本
5:30真砂沢ロッジ 9:00Cフェース登攀開始 11:30Cフェースの頭 13:20Ⅴ・Ⅵのコル 15:00真砂沢

Cフェース剱稜会ルートを山内、山本、間瀬の3人パーティーで狙う。長次郎のはるか上に2人組がいて、「あれは絶対Cフェースだろう」と考え、結構なペースでいく。1回生2人はふらふらだった。間瀬は高度順応が済んだのかわからないが、絶好調。2人とも、ペースを速くして申し訳なかった。そのせいか、山内は真砂に帰った後、かなり疲れたようだった。おかげで、順番待ちなく取り付きに。Aフェースに行く時と同じ熊野岩側のガレ場を詰め、雪渓をトラバース。取り付きの手前では雪渓がアーチ状になっていたが、別に芸術的ではなかった。デポはせず、全部ザックに詰めたのでピッケルが刺さりそうで怖かった。見た感じ、余裕で登山靴で登れそうだったが、1回生2人が「どうせならクライミングシューズで登りたい」とのことだったのでシューズで登ることに。

剱稜会ルートの取り付きは、最初の一手が急なクラックで、カムでビレイ支点を作った。ハーケンはなし。右手奥にはRCCルートっぽい凹角があった。剱稜会ルートは手前のクラック。


 1P目 最初の一手が難しく、ここだけⅣ級。傾斜の緩いクラックに上がってしまえば、あとはひょいひょい直上していけばよい。Ⅲ級。

 2P目 フェースを直上 Ⅲ級。終了点は唯一、ぺツルのボルトが2本打ってあった。左のテラス。
3P目 フェースを直上 出だしが支点がないスラブで、ちょいむずかしい。ここだけⅣ級。ほかはⅢ級。終了点で足の指皮がむけて、ここからは痛みとの格闘かと思われたが、集中しているからか気にならなかった。

 4P目 核心のナイフリッジ。といってもフレークが上に飛び出ている感じで、全く怖くなかった。傾斜も緩いし。ナイフリッジを越えてから、右上に7mほど上がったところにあるビレイ支点(ハーケン2本)を見逃して、ロープの残り3mと言われてちょっとあせった。ロープの流れ注意。Ⅲ+
5P目 ロープ不要なほど容易。終了点はリングボルトとハーケンでとったが、岩角でもとれた。Ⅱ級。

2時間30分で頭に出た。1回生が2人ともクライミング上手でよかった。中間支点は、ロープの流れのために1Pあたり2~3こずつとったくらい。登山靴でも十分登れるルート。中央大ルート敗退しておいて大口たたくなよって感じですが、実際、簡単だった。支点は意外とカムでとれた。カムってこんなに信頼できるプロテクションなんだなあ、と大いに実感した登攀であった。ハーケン、手で動くぜ!1回生2人は早くも高度感が麻痺しているのか、「全然怖くないっすよ」「興奮してきた」とか言っていた。かくいう私も、登攀中は気分が高揚しており、いまならバンジージャンプ1000mでもやったるぜ、って感じであった。とにかく、リードで登ると楽しいルートである。左のリッジを外れて右のフェースに行くことなく、あくまでリッジ脇のフェースを登るのが正しいラインであるので注意。右のフェースをバリエーションとして登るのは楽しそうではあるが。

とまあ、たまらんぜひゃっはー、と楽しいクライミングであったが、Ⅴ・Ⅵのコルへの下降は難儀であった。三の窓側に行き過ぎて登り返す羽目になった、という情報が多かったので、なるべく長次郎側の踏み跡をたどる。Cフェースの頭からみて左のほうにBフェースとCフェースの間のルンゼに降りるためのハイマツ支点があったが、雪渓のブロックが道をふさいでおり、後続パーティーも2組いたのでやめる。ここから懸垂できたら楽なんだが。

ということで、明瞭な踏み跡をたどって、ところどころⅡ級くらいのクライムダウンも交えて、Bフェースの頭に出た。浮石多し。ここから先はどうみても懸垂しかできなさそうだったので、必死こいてハイマツ支点を探したところ、頭から右のハイマツの奥に残置スリングのあるハイマツ支点を発見!微妙に踏み跡あり。ハイマツの間を20mほど懸垂すると、古いハーケン3つの懸垂支点があった。内、左の1本はつまんで動くほどやわ。ここは、ちょうどAフェースの頭の向かいであり、間が5mほど離れていた。もちろん飛び移れない。Ⅴ・Ⅵのコルはすでに眼下にあり、Aフェースとの間にあるもろいルンゼを45mほど懸垂する。下降地点から10mほどのクライムダウンでⅤ・Ⅵのコルの左(三の窓側)に降りられそうだったが、コル付近の雪渓のブロックのせいでコルにいけるか怪しかったし、長次郎側に3mトラバースした地点に懸垂支点があったので、そちらで懸垂することにする。トラバースは結構危険だったため、カムとスリングでセルフビレイをとりつつトラバース。ただし、岩はもろかった。この最後の懸垂支点も、ハーケンが打ってあった。15mくらいの懸垂で、無事Ⅴ・Ⅵのコルに降り立つ。一安心。下降だけで1:20くらいかかった。

さあ、真砂に戻ろうとなるのだが、後続の2パーティがともに私たちとは違うところから懸垂しようとしており、内、三の窓側のパーティは雪渓のブロックの向こう側に降りようとしており、はたしてⅤ・Ⅵのコルに来られるのだろうか、と思った。3つも懸垂ポイントがあるのか?私たちの降りたポイントは最も長次郎側で、捨て縄も4~5本あったので、まあ正しいだろうと思っていたのだが、よくわからない。雪渓の残っている量や場所によっても変わるのだろうか。Cフェースを登るときには、初見のメンバーだけだと、私たちのように(今回のメンバーは全員初見)下降で手間取るかもしれないので、早めの出発を心がけたほうがよさげ。午後はガスってくるし。やはり、初見メンバーだけだと下降は怖い。「登りより、下りが大事」といわれるのも納得である。事前情報の収集が不足していたので、反省である。Aフェースの下降がわかりやすかったため、気が緩んでいたかもしれない。

帰りは、前日Aフェースにいけなかった1回生のために、Aフェース基部から帰った。ちなみに、Ⅴ・Ⅵのコルからのガリーは、雪渓の右側に浮石だらけの道があったので、雪渓は通らずに済んだ。

8月26日(日)

真砂沢から雷鳥平への移動日。食糧が減った分ザックは軽い。下山する岩澤さんを見送り食事作り&パッキング開始。遅く出発したので雪が柔らかくなっており、ドタで雪渓を登れた。今回のメンバーの1人が、長次郎谷の下りで「4本爪アイゼンは役に立たない」ともらしていたが、確かに中途半端にアイゼン付けるくらいなら、ドタで雪渓歩くのもアリな気がする(早朝のガチガチ雪渓はきつそうだが)。 読図をしながら別山乗越へ。剱沢雪渓を登る道中で、吉澤が地形を把握していないことが発覚(後で山内も把握していなかったことがわかる)。事前の検討不足が浮き彫りになる。北村のペースが上がらない。剱がきれいである。間瀬だけちゃっちゃと別山をピストンする。山頂の滞在時間わずか5分。雷鳥平で軍隊みたいな高校生の集団がおり、びびった。ここで何泊かするみたいである。夜は、満天の星空が出迎えてくれた。北斗七星ですよ

8月27日(月)  龍王岳東尾根
メンバー:松尾 間瀬 北村 山内 山本
8:00室堂バスターミナル 9:30一の越 10:00取り付き 11:15登攀開始 13:15龍王岳山頂 14:30雷鳥平

溝畑、吉澤は剱岳にアタック、残りのメンバーは講習を受ける。

室堂バスターミナルで、今回の研修を受け持ってくださった方と待ち合わせ、一の越へ。

一の越からは、龍王岳東尾根がきれいなスカイラインを描いており、その名のごとく龍が登っていくようである。のこぎりのように尖った岩肌と緑豊かなハイマツ帯とが調和し、深海の静けさをたたえた青い世界の下に、危うくも美しい岩稜を山頂に向けて背を伸ばしていた。-「登ってみたい」-クライミングを少しでも嗜んだことのある者ならば、誰しも同じことを思うだろう、それほどこの尾根には魅力があった。だが、この登り龍の背に辿り着くには、ルートファインディングが必須である。全く初見の我々にとっては、龍の尻尾さえも遠く感じた。

一の越の雄山側の建物の脇に踏み跡があり、5分ほどで、尾根の末端に続く大きな岩がごろごろしている、緩い下りのガレ場に出る。ガレ場の右手奥には雪渓が左手のほうに伸びている。ガレ場の左手に、お花畑の中に入っていく、人1人分ほどの踏み跡があり、そこを進んでいく。徐々に進路を右に取ると、雪渓の下部末端の池に出て、そこからごく小さな沢をわたり、東尾根の末端に出る。ここで、クライミングの装備を付け、登るルートを確認する。見た目7、8ピッチほど、4時間かかるかな、と思っていたら、ガイドの方から、2時間で登れないと源次郎尾根は厳しいぞ、とのお言葉を頂いた。-「クライミングは戦争である」-この言葉が脳に強く焼きついた。そうなのだ。ここは危険地帯だ。完璧な準備を安全地帯で行い、あとはひたすらスピード勝負である。登っている最中に「うーん」と悩んでいる暇など刹那もないのだ。自然と、手に力が入る。緊張で頭がふわふわしている自分を意識する。今の自分たちの技量では、2時間は正直厳しい。でも、やるしかないのだ。

山本、北村、間瀬が3人パーティ、山本がトップ。2人パーティは山内、松尾だったが、2P目から松尾と間瀬を交代する。2P山内、残り4P間瀬がトップを担当。登山靴。

1P目 ちょい傾斜のきついクラックを登り、スラブへ。最初はハーケンがあった。Ⅲ+
2P目 スラブ。傾斜は緩い。Ⅲ

3P目 ハイマツ帯多し。ハイマツでビレイ支点。Ⅲ-
4P目 ハイマツ帯多し。Ⅲ
5P目 スラブ。Ⅲ
ここでロープをしまい、200mほどガレ場を進む。踏み跡あり。左は切れ落ちて崖になっているので、右側を姿勢を低くして慎重に進む。松尾が遅れ気味だったが、無事に最後のピッチへ。
6P目 傾斜が一番きつい。ハーケンあり。フェースを登りきってハイマツでビレイ支点。Ⅲ+

1~5P目はそれぞれ45mほど、6P目は30mほど。といっても、終了点など全く整備されておらず、浮石だらけのルートなので、どのルートをとるか、どこで切るかで変わる。Cフェースと比べたら、ハイマツ木登りが多い分、かなり簡単に感じる。基本的に左のリッジの向こう側は切れ落ちているし、岩がぐらぐら動くので、右の緩い斜面を狙って登ることになるだろう。中間支点は各ピッチ2~3こずつ。ただ、残置支点が皆無と言っていいくらいないので、ハイマツやカムでの支点作成ができないと厳しい。小ピークが3つほどある。結局、山頂まで3時間かかってしまった。悔しい。

山頂から雷鳥平へは1時間で下ってしまう。一の越から室堂に下りる途中すぐに、右手にペンキで岩に書いてあるのだが、雷鳥平に降りる道があるのでそこを利用した。

8月28日(火)  別山岩場
メンバー:松尾 間瀬 北村 山内 山本
4:15雷鳥平 5:05別山乗越 6:00別山北峰 9:30取り付き 11:30登攀終了(北峰) 13:30雷鳥平 15:30室堂 17:00立山

メンバーは龍王岳と同じ。

テント撤収は別行動の2人に任せ、雷鳥沢を50分で登る。別山北峰からの眺めは、剱の山頂、源次郎、八ツ峰がⅥ峰フェースまできれいに見えて、穴場かもしれない。剱沢から見るのとは月とすっぽんである。ただ、写真撮影で岩場のほうのザレ場にいた人が見てて危なっかしかった。良い写真を撮りたいのはわかるが、危険地帯にまでわざわざ踏み込んでまで撮るのはいかがなものか。看板もあったし。

ここで、ハイマツ・岩角での支点の取り方を学ぶ。大変勉強になった。さて、北に延びる尾根の末端まで下ることになるのだが、浮石が多くてかなり怖い。下りながら、ここの岩場は面白そうだなどと話しながら、ルートを確認する。相当浮石が多い。左には急峻な谷が何箇所かあり、ルートファインドを要する、なかなか緊張感のある下りであった。

尾根末端の取り付きは、横に広い岩場で、6本くらいルートがありそう。ここで、カム・ナッツ・ヘキセントリックの使い方を学ぶ。ナッツが完璧に決まるとすごく気持ちがいい。ナッツキーの正しい使い方は、完全に勉強不足だった。ここで修正できてよかった。左端と右端で別れて登攀開始。

1P目 凹角。終了点をカムでとるが、岩が浮いているような気がして怖かった。Ⅲ+
2P目 スラブ。出だしが怖い。途中のクラックの入った傾斜の強い岩は、もろいということで右から巻く。Ⅲ+

3P目 ほぼ平地。右のスラブへ向かう。ハイマツでビレイ支点。グレードなし、ロープを運んだだけ。

4P目 スラブ。上部は浮石しかないので、ハイマツで支点をとるしかない。ここで、奥のハイマツでつくった支点だとロープが引き上げられず、支点を作りなおしたせいで、15分ほどロスする。申し訳ない。

ここから、ロープなしで50mほど移動する。
5P目 最終ピッチ。ハイマツ帯。Ⅲ-
ほとんど30mほどのピッチ。4P目は15mくらい。とにかく、浮石が多い。Ⅵ峰フェースとは比べ物にならないほどである。持ったらボゴッが当たり前のように起きる。落石すると、剱沢キャンプ場に落ちていくので、絶対に落石は許されない。ほんとに、ビレイ支点の作り方が重要な岩場である。クライミングの面白さは、グレードだけではない。ラインとり、支点作成が面白いルートだってあるのだ。ここは、まさにそんな岩場である。創造力と分析力とをフルに活用して、すべて支点を自分で構築していくクライミングは、スポートクライミングとは全く違う面白さがあると思う。普段、ジムで登っている人にも、剱岳をバックに高度感満点のクライミングを行える別山岩場に来てほしい、と思える、すばらしい岩場であった。龍王岳東尾根も別山岩場も、今度自分たちだけで来て、時間短縮してリベンジしたい。ちなみに、目標1時間30分で2時間かかってしまった。コールをホイッスルだけにするのは、大声出す必要がなくてかなり楽である。なぜ今までいちいち叫んでいたのだろうか。不思議である。結局、ビレイ支点の作成に一番手間取った。

北峰にもどってから、ザックと60cmスリング2本を使った搬送方法を学ぶ。ただ重いザックを背負っているだけの感覚である。

帰りもパパッと雷鳥平に戻り、先に下山して荷物を大量に持ち帰ってくれた2人に感謝しつつ、室堂に荷物を置いて、みくりが池温泉へ。きれいさっぱりして、富山駅の路面電車に感動し、ブラックラーメンを食べ、神戸に帰った。北村さん、車の運転お疲れさまでした。ほんとに助かりました、ありがとうございます。

総括

今回は少ない上回生と多い新入生で別働パーティに分かれながらアタックを行うという近年なかった形態での合宿となったが、大きな事故もなく一通り計画をこなせたことは評価できるだろう。しかしながら、事前の検討不足、準備不足、新入生の教育の不徹底、緊急時の対策など反省点・課題も多く残った。来年の夏合宿は100点満点で終われる合宿にしたい。