八ヶ岳トレーニング山行 報告書

【メンバー】
矢崎(OB) 小宮(OB) 近藤(3) 岩澤(2)

【日程】
 2月10日~12日(前夜発)  

【行程】
  舟山十字路~立場山~阿弥陀岳南稜~行者小屋~中山尾根~横岳稜線~地蔵尾根~行者小屋~美濃戸口 

文責・岩澤(2)

2/9(金)  
 アプローチ

 今回の山行は、ルオニイへの遠征に向けた雪稜登攀のトレーニングが目的である。現役生だけでは難しいルートであり、近藤・岩澤にとっては良い経験値稼ぎとなる。
 メンバー四名は篠山口駅前にて矢崎OBの車に乗り込み、夜の高速道路を長野へと向かう。
 日付が変わって午前2時、原村役場に到着。車内にて仮眠をとる。暖冬とはいえ、二月の夜の寒さは身にしみる。

2/10(土) 曇り時々晴れ 
 9:25舟山十字路~ 10:35旭小屋~ 13:05立場山~ 15:25阿弥陀岳南稜P3手前コル

 朝、原村役場に車を置いて出発。歩いていれば途中でタクシーを拾えるだろうとの見通しを立て、とりあえず徒歩で舟山十字路の方面を目指す。しかし、なかなかタクシーは通りかからない。1時間ほど歩き、このまま舟山十字路まで歩いていってしまうのではないかと思い始めたころ、ようやく一台のタクシーが通りかかり、これを拾って、車が入れるところまで乗せてもらう。よくしゃべる気さくな運ちゃんだった。
 タクシーを降りてから、さらに40分ほど車道を歩くと、舟山十字路に着く。いよいよ入山だ。
 装備を整え、3分ほど歩いたところに、「阿弥陀聖水」という、ありがたい名の湧き水があるので、これを水筒に満たしていく。数箇所、小沢を渡渉して30分ほど歩くと、雪深くなってきたので、スパッツを装着する。黙々と歩いて、旭小屋の脇を通過。そこから急登を登って尾根へと上がる。ふと見ると、あちこちに「入山禁止」の看板がある。「入山者からは十万円以上いただきます」との脅し文句が強烈だが、キノコのシーズンの話だろう。無視して突き進む。
 尾根には真新しいトレースが付いている。やはり3連休ともなると、入山者も多いようだ。立場山までは急な登りで、岩澤のペースが遅れる。立場山の山頂は樹林の中のなだらかなピークで、何の感動も無く素通りした。
 何度か休憩を入れても岩澤のペースが上がらないので、共同装備を分けることとなった。岩澤は前回のアイゼン合宿に続き、ペースの遅れによって共同装備を人に持ってもらうのが2回連続となり、基礎体力の不足が浮き彫りとなった。
 この日はアイゼンを履くことは無く、テン場となるP3手前のコルに到着。他に2パーティがテントを張っていた。我々もテント設営を行う。風が無く、雪も降っていないのがありがたかった。また、auの携帯電話の電波状態が良く、天気予報の情報を電話で得られた。大きな天候の崩れは無さそうだ。
 夕食の豚汁を食した後、翌日の行程について話し合う。その結果、計画では三日目に登攀するはずだった中山尾根を、二日目のうちに済ましてしまうことになった。だが、この決定が後に困難な事態を呼ぶこととなる。
         

2/11(日) 曇り、一時小雪舞う 
 6:40テン場~ 8:15阿弥陀岳山頂~ 9:05行者小屋9:45~ 10:36中山尾根取り付き~ 18:00終了点、横岳稜線~ 19:05行者小屋

 5時起床。朝食のパスタを胃に流し込み、テントを撤収する。岩澤の共同装備の一部は、昨日に引き続き他のメンバーが分担する。
 最初からアイゼンを装着し、30分ほどで急峻なルンゼに達する。下部が切れ落ちているので、滑ったらひとたまりも無いが、雪はいい具合に締まっているし、時間は短縮したいところなので、確保せずに進む。特に問題も無く通過できたが、思ったより長く急峻なルンゼが続いていて、足を休める暇などないため、岩澤は後半かなり足の筋肉がつらかったようだ。だが、ここでかなり高度を稼ぐことができた。
 その後、いくつか下部の切れ落ちた、怖い感じのところを通過するが、いずれもロープを使わずに済んだ。おかげで、テン場から阿弥陀岳山頂までの所要時間は約1時間半であった。
 広い阿弥陀岳山頂で一休みしたのち、行者小屋へと下る。赤岳方面へ尾根を少し行ったところから、沢筋に沿って北へ下る。行者小屋のテン場は、数十張のテントで彩られており、にぎわっていた。
   ここにテントを設営し、ハーネス類はここで装備してしまい、登攀に不要な装備はデポジットしてゆく。中山尾根の取り付きまでは、明瞭なトレースを追いながら樹林を塗ってゆく。樹林を抜けると、すぐ取り付きである。数人のパーティが懸垂下降してくるところだった。
 まずは右から回り込んで、凹角の岩場を登攀する。やはり四人ではかなり時間を消費する。小宮OBがトップとなり、矢崎OBがプルージック、近藤と岩澤はセカンドで登る。ラストの岩澤が登り、小宮OBが確保している間に、矢崎OBと近藤は次のピッチの登攀にかかる。垂壁を左から巻いて、凹状の急なフェースを攀じ、草付をリッジまで登る。
 ここからは雪稜を120mほど、ところどころ確保しながら登り、岩壁に到達する。この時点で、取り付きから2時間半ほど経過していた。我々は、もう核心を越えたと思い込み、横岳主稜線へ抜けるバンドを探そうとしてしまった。しかし、そのようなものは無いため、終了点まではまだだと気付いて、登攀ルートを探した。
 すぐに残置支点を見つけたので、そこから小宮OBがトップで登り始める。凹状を右上しようとするが、かなり難しく、支点も少ないようで、一旦断念し、別にルートがないか探してみる。資料を取り出して見比べ、左の草付のほうがルートではないか、などと検討していたが、どうも違う。再び、先ほど登ろうとしていたルートに取付く。改めて資料と見比べ、やはりここが通常のルートであり、右上ではなく左上すべきだということが分かった。中山尾根の本当の核心はここからであった。
 小宮OBは苦戦しながらも、これを越える。続く矢崎OBも苦戦する。プルージックなので、かなり不安感があるはずだ。待っている近藤、岩澤は寒さに奥歯を鳴らす。矢崎OBが登り終え、近藤が登る。テンションをかけつつ、どうにか登りきる。4人パーティの待ち時間の長さは、この寒空の中ではかなりこたえる。ちょっと油断するとすぐに指先の感覚が無くなってゆく。岩澤は、叫び声を上げて気合を入れつつ、A0を駆使し、引っ張られながらやっとのことで登りきる。最後のハング気味の凹角を越えるところでは、もはや無我夢中で攀じあがるといったところだった。
   ようやく核心を越えたが、全員かなり寒さと疲労で消耗した上、時刻は16時に達し、日が傾きかけていた。岩壁下でルートファインディングに手間取ったのがいけなかったようだ。焦りが出てくる。
 さらに草付混じりの岩稜を進み、最後のリッジをビレイしつつ登る。まず矢崎・近藤ペア、続いて小宮・岩澤ペアという組み合わせで行く。上部は見えず、声も届かないので、ロープの動きから、勘でビレイ状態を判断して登るしかない。体力の消耗はかなり激しく、手足の感覚も体の動きもどんどん鈍くなっていく。ラストの岩澤が、やっとのことで終了点のピナクルにたどり着いた頃には、完全に太陽が山に隠れ、空がどんどん暗くなってゆくところだった。矢崎・近藤は先に横岳稜線へ出て下りだしていた。
 バンドを40mほどトラバースして横岳主稜線上に出ると、ようやく一安心といったところだったが、空は一気に暗くなってゆき、油断を許さない状況に変わりは無かった。下降路となる地蔵尾根を目指して南下する。空にはオリオン座が輝く。稜線上は所々猛風が吹きつけ、雪の粒がぴしぴしと顔を叩く。
 地蔵尾根の頭に到達し、トレースを辿って下降を始める。行者小屋の明かりが煌々と光っており、これがかなり心強い道しるべとなるが、一時トレースを見失い、かなり焦る。そのとき、尾根の下部からヘッドランプの光がきらめくのが見えた。後で聞いたところ、これは先行していた二人が振り返ったものであった。これにより、正しい尾根筋を見出し、続いてはっきりしたトレースを発見。これを追って下ってゆくことができた。先行した二人がちゃんとテン場に着いたかをも気にしつつ、暗い樹林の中、足で探りながらトレースを辿り、ようやく行者小屋に到達する。矢崎・近藤の二名はテントの中で、小宮・岩澤が一時間経っても着かなかった場合どうするか相談していた。空は満点の星空であった。
 夕食のシチューを食し、小宮OB持参の酒粕で甘酒を作り、温まって眠りに就いた。
         

2/12(月) 晴れ 
7:00行者小屋~ 7:55美濃戸山荘~ 8:38美濃戸口バス停

 5時起床のはずが、寝坊してしまい5:50起床。すでにテン場はにぎやかになっていた。朝食のラーメンをさらっと胃に収め、テントを撤収する。
 美濃戸山荘まで、道を下ってゆく。人の行き交いがかなり多いため、難なく進める。いくつものパーティを追い抜きつつサクサク下る。所々凍っている部分があり、転ぶ者もいたが、問題無く美濃戸山荘に到着。一服してから、あとは車道をてくてく歩いてゆき、バス停に到着。
 客待ちをしていたタクシーに尋ねると、原村役場まで2500円ほどとのこと。バスよりも安くつくので、乗せてもらうことにした。途中でメーターが2500円を越えそうになるが、ここでメーターを止めてくれた。良心的な運ちゃんだ。
 原村役場で矢崎OBの車に乗り込み、銭湯へ。さっぱりしたところで蕎麦を食べて帰路に就く。三連休の最後ということもあり、何度か渋滞に巻きこまれ、神戸に着いたのは19時ごろであった。
         

反省会記録
        

 ★中山尾根に予想以上の時間を食われ、行動が日没後に食い込んでしまい、危うく遭難するところであった。気候条件は悪くなく、入山者が多かったため、トレースもはっきりしていたので無事下山できたが、これらの条件が悪ければ、深刻な遭難につながってもおかしくなかった。これに対して以下のような反省が挙げられる。
 ・資料の読み込みが不完全で、中山尾根の情報が不足していた。
 ・全員揃っての検討会が行われなかったため、事前に問題点の指摘がなされなかった。
 ・パーティの人数(4人)が多過ぎた。登攀をともなう場合、2人か3人が最適である。
 ・4人で登るのならば、シングルロープ2本で、初めから2人・2人のパーティで登ってもよかったかもしれない。
 ★装備に関して
 ・雑品のスポンジは全く役に立たない。代わりに個人装備だった綿のタオルがかなり活躍した。綿なので当然水はよく吸うし、鍋敷きにも使える。
 ・  ★食糧に関して
 ・砂糖が多かった。食糧担当は甘い紅茶が好きなので、これでもいいと思ったが、甘いのが嫌いな人もいたので、今後はほどほどにしておきたい。