黒部源流  奥の廊下~祖父沢~雲ノ平 報告書

【メンバー】
 CL食料・大西(6) 装備・伊藤(1) 小宮(OB)

【日程】
 2004年 8月11日~14日

【行程】
 折立~太郎平~薬師沢小屋~黒部川奥の廊下~祖父沢~雲ノ平~三俣蓮華岳~双六岳~新穂高温泉

文責: 大西 良一

8月11日(水)晴→曇
折立7:50~太郎平11:40-12:00~薬師峠TS12:20

この山行は、夏合宿終了後、せっかく北アルプスにいるのだから、と計画されたもの。都合で夏合宿の雪練に参加したのち神戸に帰っていた大西と、富山で夏合宿の疲れを取っていた伊藤は、有峰口で落ち合い、バスで折立へ向かう。小宮は夏合宿後、立山から五色ケ原・薬師岳を越え、前日中に折立へ入った。<小宮個人記へ>

折立は全く携帯も通じなければ、公衆電話も無いところだ。あるのはオートキャンプ場のみ。そこにはオートキャンプ独特の、えらくデカいテントが立ち並んでいる。BBQセットやダッチオーブンも見える。あれで料理したら美味いんやろうなぁ。ちょっと羨ましい。
登山届をポストに入れ、入山する。しばらくは樹林帯の急登を行く。標高1800mを越えるあたりから、周囲の樹木が低くなり、展望が開ける。北には剣岳が、西には微かに白山が見える。快晴だ。今年は夏合宿も含め、本当に天候に恵まれているように思う。森林限界を越えると傾斜も緩くなり、あとは高原上の木道をノンビリ登るのみ。
昼前には太郎平に着く。ここの衛星公衆電話から入山連絡を入れる。小屋の人に源流部の沢の状況について聞いてみると、水量は例年並だが、午後は夕立の可能性があるので早めの行動を心がけてください、とのことだった。早めの行動は登山の基礎のキソ。明日は日の出とともに行動しよう。
緩やかな木道を通って薬師峠まで下り、テントを張る。小宮はここで洗濯物。やや寝不足の大西と、夏合宿の疲れが残っている伊藤は、予定していた薬師岳ピストンを中止し、翌日の雲ノ平までのロングルートに備える。

8月12日(水)快晴
TS4:30~太郎平4:50~薬師沢小屋6:55-7:15~赤木沢出合8:30~祖父沢出合10:05-20~雲ノ平TS13:10

3:30起床。ちゃっちゃと準備し、4:30出発。朝露に濡れた木道が滑る滑る。空は雲一つ無く、漆黒の天頂から、東の朝焼けへと、見事なグラデーションで彩られている。山に来て本当に良かったと瞬間だ。
太郎平を過ぎ、沢に向け、まだ薄暗い樹林の中を一気に下る。6:15頃、東俣出合付近で日が差し込む。木漏れ日が差し込む森は、朝露に濡れて美しい。が、濡れた木道は…。スルッと足下のグリップが抜ける。怖ぇ…。
薬師沢小屋に着く。富山テレビが取材に来てる。小屋の方にインタビューをするようだ。残念ながら、番組は富山ローカルでしか見れないとか。沢靴に履き替え、テレビ局に追い立てられるように小屋を発つ。
小屋を出たところに沢人向けの警告板がある。なになに、要約すると、「最盛期の赤木沢には100人/日もの登山者が入山するが、兎平(赤木沢出合付近)などにテントを張る人が増え、ティッシュ等が散乱している。源流部は幕営禁止です。」みたいなことが書いてあったと思う(すいません、うろ覚えです)。そうですよね。様々な山域で、踏みつけによる植生破壊や土壌の浸食、ゴミ投棄、水質汚染、人為落石etc…、オーバーユースによる問題が叫ばれている現在、人が山に入ること自体が自然には負担になっていることを自覚し、意識してローインパクトな行動をとる必要があるように感じる。山の美しさを後々にも残していくためにもね。
小屋横の踏跡を通り、黒部川の源流部、奥の廊下へ。下・上の廊下のような荒々しい箇所は無く、開放的で明るく、非常に気持ち良い。河原を歩いたり、水際をポチャポチャ行ったり、美しい流れを見ながら快調に飛ばす。夏の沢登り、最高!
1時間ほどでイワナ止ノ滝。ここは左岸側を巻く。さらに20分ほどで赤木沢出合だ。ほぼ腰下までつかりながら徒渉するが、流れは緩いので楽勝。清冽な水が火照った体に心地よい。
さらに1時間半ほどで祖父沢の合流に着く。予想以上のペースに驚く。ここからは黒部川の本流と別れ、祖父沢に入る。右岸には高山植物に彩られた祖父平が広がる。
祖父沢は、最初は大岩や流木が散乱する河原歩きを強いられ、それほど気持ちのいい沢ではなかったが、標高2200m付近の崩壊地を過ぎると小滝が連続して現れるようになり、俄然、イイ感じになってくる。傾斜も増し、やや足取りは重くなるが、小滝のシャワークライムは楽しいものだ。幾つもの小滝を越え、樹林帯を抜けると、いよいよ沢は細くなり、周りの風景は高原の様相を呈してくる。薮漕ぎは全くない。気持ちのいい青空の下、緑のじゅうたんの中を飛び石伝いに高度をかせいで行く。水が尽きる頃、雲ノ平の幕営地に辿り着く。
雲ノ平は木道やトイレ整備のため工事中。なんとパワーショベルまでいて驚く。木道より土道のほうが歩きやすいが、植生保護などの為にはやむを得ないだろう。
しかし、やはり美しい場所であることには違いない。目の前には黒部五郎岳や三俣蓮華岳など、黒部源流を囲む山々が見え、その手前には今、登ってきた沢が切れ込んでいる。日が傾いてくると、さらに植物達の輝きが増し、より印象的な風景となる。

8月13日(木)快晴
TS9:10~三俣蓮華岳12:15-35~双六岳13:30-50~双六池TS14:40

ここまでくると、先は短い。雲ノ平でくつろぎ、出発。この先、大西・小宮は5年前に通ったルートをトレースする。
日本庭園を行く。自然の植生のままだが、ハイマツや岩などが、人によって手を加えられたかのように美しく並ぶ。足下には高山植物が広がり、まさに北アルプスの楽園だ。
祖父岳への分岐を見送り、黒部源流部まで一気に下る。源流の碑を過ぎると、三俣蓮華への登りが始まる。ここの登り、特に頂上直下は傾斜がきつく、伊藤は少しヘバり気味。一方、大西・小宮は余裕の表情で頂上へ。伊藤も経験を積むことで余裕が出てくることだろう。
お盆時期とあって、三ツ俣蓮華岳の頂上は人で一杯だ。が、展望は素晴らしい。黒部源流が一望でき、遠くに太郎平も見える。辿ってきたルートも見渡せる。その距離と高低差に驚き、黒部源流を遡ってきたんだ、という実感が湧く。
ここからは稜線上の登山道を行く。両側に黒部五郎と槍を望み、足下には小さな花々が咲き乱れる、気持ちのいい登山道だ。
三俣蓮華岳から1時間弱で双六岳に着く。眼前に独特の丸い尾根と、槍ヶ岳が広がる。人も少なく、のんびりと景色を眺め、休憩する。
急坂を下り、双六小屋へ。幕営箇所は、小屋のすぐ南にある双六池周辺。砂地で岩が少なく、とても快適なキャンプサイトだ。

8月13日(木)曇|晴→雨
TS4:30~鏡平5:55~ワサビ平7:40-50~新穂高温泉8:40

停滞前線が近づいているので、下山日としては異例の4:30発。黎明の登山道を進む。
5時半頃、弓折乗越(登山道分岐箇所)で、西鎌尾根に登る日の出を拝む。雲間から漏れる光芒が神秘的に槍を彩る。
小池新道に入ると、あとは下り一辺倒。飛ばしに飛ばし、前を行く人をゴボウ抜き。堰堤が出てくると、登山道も終わり、林道となる。
林道に入って15分、ワサビ平に着く。途中、ブナ林がきれいだ。「北の国から」って、こんな感じだったかも…。場所は全く違うけどね。
ワサビ平から先は、何の変哲もない林道歩きとなり、8:40、新穂高温泉に着く。上宝村営の公衆浴場は9:30からだ。排気ガスが臭いバスに「アイドリングストップしろよ!」と思いながらも、特に動く元気もないので、浴場前の駐車場脇で荷物整理や下山連絡などをして時間を過ごす。
開湯とともにお風呂へGO!チョロチョロとしか出ないシャワーの水圧に問題がないわけでも無いが、これが無料なのは本当にありがたい!自然の恵みと村長さんの太っ腹(?)に感謝感謝。

10:20発の高山行きバスに乗る。とたんに大粒の雨が降り出してきた。

<反省・感想へ>

 小宮個人記 (夏合宿・剣岳~黒部源流)

8/5

不動岩で、重登山靴で岩登りの練習を藤本とする。簡単なところで、まだ行ったことが無いルートがあるのがわかり、それを行く。道場駅前でビンビールをラッパ飲みする。
大阪でご飯を食べたりして急行「きたぐに」で出発。寒いので車掌に冷房の温度を上げてもらう。

8/6 曇り時々晴れ
称名滝8時過ぎ-16時ごろ真砂沢ロッジ(以下BC)

富山駅で地鉄の始発を1時間以上待ち、立山駅でバスの始発をまた1時間以上待つ。称名滝を出発したのは8時過ぎ。ひたすら登って木道に出る。岩登り用に持ってきた運動靴に履き替えると早く歩ける。
大日平山荘にはなにやらチベット語で書かれた看板がある。大日岳へはしんどいので行かない。奥大日へ行く途中は花が何種類も咲いていてとてもきれいだ。奥大日からの下りで左ひざが痛くなる。
別山乗越への登りはとてもしんどい。真砂沢への下りも苦労する。今年は暑いのか雪渓が大分少ない。
現役のテントに着くと晩御飯のスパゲッティを作るのを待っていてくれた。藤本の差し入れを渡す。夜暗くなるころ矢崎が現れる。近藤は腰痛。食いすぎか。

8/7 晴れ
BC未明ー剱岳ー昼過ぎBC

予定とは違うが源次郎尾根を登る。現役は岩稜のトレーニングをしていないので重登山靴で岩を登るのがぶっつけ本番だ。田中はしんどいのでみんなで重い荷物を分けて持つ。途中であまり人が通らないルートを通り、おいしいイチゴを食べることができた。
頂上はあいにく雲で何も見えない。長次郎雪渓左股の頭で八峰下半上半を終えた矢崎に遇う。ここで翌日チンネに行く尾崎、田中と別れる。これから先は水場が無いので水をあげる。
藤原と伊藤と雪渓を下る。ピッケルは近藤のを借りた。
テントでしばらく暇をつぶすと明石が姉と来て、差し入れをいただく。

8/8 晴れ
BC未明ー八峰6峰Cフェースの頭ー昼過ぎBC

伊藤と岩を登る。順番待ちで1時間ぐらい待たされる。登っている間も待つ。先頭はルートを探しながら行くので時間がかかるが、次からはただ登るだけなのですごい待たされる。待たされた割にはたいしたこと無いルートだった。
近藤はロッジでゲゲゲの鬼太郎を借りて読んでいた。
明石たちと雪渓からピークに行っていた藤原は尾崎、田中を待って夕方、帰ってくる。チキンラーメンチャーハンがおいしい。

8/9 晴れのち雨
BC朝ー室堂15時ー18時五色ヶ原キャンプ場

剣沢の雪渓で猿の家族に会う。出たばかりの山菜を食べている。強い日差しの下、子どもは雪の上でじゃれあって気持ちよさそう。近藤は空身でもやっと歩ける程度。みんなで荷物を分けて持つ。尾崎はとても重そう。室堂で皆と別れて一人で縦走しだす。
と雨が降ってくる。雷も鳴った。霧であまり視界が無い。全身びしょぬれ。雨もやんで五色ヶ原ヒュッテに裏の窓から入っていると、ちょうど天場代を徴収しに来た帰りらしい山荘の人がここは使用禁止だといって天場でツェルトで寝ることになる。
木の杖をポールにして何とか寝れる。藤原に借りたコンロで温まる。

8/10 晴れ
キャンプ場5時過ぎー16時折立

夜中にツェルトに触れた足が冷たいので起きて冷麦を食べる。あぐらをかいたまま今度は足を木のポールのあるほうに向けて寝る。
朝4時48分に起きて歩き出すとすぐ暑くなり、半そでになる。
スゴの頭からの下りでまた左ひざが痛くなる。何とかごまかしながら薬師岳の頂上まで行き靴下と靴やカメラなどを乾かす。ここから折立までの下りがとても大変だった。特に太郎平からの下りは単調で木も生えておらず、視界も悪くとてもしんどかった。
折立の地鉄バスのテントのベンチで寝る。

8/11 晴れ
折立8時ごろー昼 薬師峠

朝、大西と伊藤が有峰口からバスで来る。装備を分けて出発。高度を上げると剱岳がよく見える。薬師峠で靴下を洗って乾かす。テントの中は暑い。二人は明日のために体力を残しておくといって薬師岳には登らなかった。

8/12 晴れ
峠未明ー黒部川奥廊下ー雲ノ平

木道を下るがよく滑って危ない。二人は何回か転んだ。薬師沢小屋で沢タビに履き替え黒部川を遡る。魚は2匹見えたがあまりいない。入る人が増えたからだろうか。

8/13 快晴
雲ノ平9時ー三俣蓮華岳ー双六小屋

5年前に来たときのことはあまり覚えていない。槍ヶ岳や笠ヶ岳がよく見える。

8/14 曇り
小屋未明ー8時過ぎ新穂高温泉

すごい速さで下る。9時半から開くタダ風呂に入るまで足湯に行ったりする。バスで高山まで行き、駅裏のお好み屋でネギ焼きを食べて、18切符で帰る。岐阜で伊藤と別れ、大阪で大西と別れた。

反省・感想

全体的に、予想をはるかに超えるハイペースで黒部源流を辿ってきました。

夏合宿明けの伊藤は、やや疲れが残っていたのか辛そうな時もありましたが、それでもコースタイムの半分程度の時間で行程をこなしてきたことを思うと、十分な体力がついていると思います。
読図は問題なくこなしていました。残る課題は天気図でしょうか。

沢は上の廊下はイワナ止ノ滝や、赤木沢出合いを除くと、ほぼ長閑な河原歩きでした。
祖父沢は、下部は河原に大岩や流木が散乱し、崩壊した崖のそばを通過する箇所もあるなど、気持ちのいい沢ではありませんでしたが、高度を稼ぐにつれ、小滝が連続する美しい沢になり、最後は森林限界を越えて高原に飛び出す、その景色の変化が印象的な沢でした。
ザイル類は不要でした。初心者同伴でもお助け紐で十分でしょう。もちろん、天候には十分に気を配る必要がありますが…。

装備は、夏合宿の装備をそのまま継承して使用したため、ザイルなど一部で過剰な装備がありましたが、体力的に十分カバーできました。
食料は、日程が短く、それほどハードなコースでは無いため、生野菜(ニンジン・ジャガイモetc)を多用したメニューとしました。生野菜は新聞にくるんでタッパーにいれていましたが、最終日まで問題なく食べられました。また、淡泊類にはペミカンの代りにチーズやサラミを使用しました。結果、非常に美味しく食べやすい料理になり、好評でした。

最後になりましたが、お忙しい中、お付き合いいただいた小宮さんにはお礼を申し上げます。ありがとうございました。