東黒沢からナルミズ沢へ ~利根川の支流をめぐる沢旅~

平成15年10月13日 酒井 利直

東黒沢は白毛門山東面の水を集めて土合で湯檜曽川に合流する。今回の沢旅はこの東黒沢をつめ鞍部からウツボギ沢を駆け下って、宝川の上流ナルミズ沢を遡行し朝日岳に至り白毛門へ続く稜線を南下し土合へ戻るというものだ。いわば利根川源流部の南の一角をたどる沢の旅だ。以前からやりたいと思っていた沢から沢の旅の入門編である

平成15年9月27日 晴れのち曇り

午前5時に宮本君の車で自宅を出る。2時間半程で白毛門登山口の大きな無料駐車場に着く。沢支度の人が数名いるが、人気の高い白毛門沢に入る人が多そうだ。
8時遡行開始。30分程で「ハナゲの滝」につく(写真1。40mの斜め滝で実際の傾斜は写真よりも強い。水流の左側のスラブを登り、最上部は左手のブッシュの中に入った。
水勢が弱い時は最上部で水流を右に渡ったり、水中にスタンスを求めることも可能だが、今日の水勢では無理だ。
午前9時白毛門沢出会い 
東黒沢はナメや小滝が続く穏やかな沢だ。滝はノーザイルで直登できるものばかりだ。(写真2)
ナメは明るく大きい。もしこの東黒沢が奥秩父あたりにあると大変有名になるだろう。ただし人気コースの多い湯檜曽川近辺ではこの沢は地味なようで今日は他のパーティに出会わなかった。
遡行自体は簡単であるが、最低鞍部に突き上げるルートを取らないと藪漕ぎが大変なので、慎重にルートを確認してしながら進む。本流をたどるとほとんど鞍部のすぐ下まで水流が続いていた。
午後12時半尾根の鞍部(1350m)着。
鞍部からは藪に突入してウツボギ沢を目指す。すぐに水流が出てくるが、大きな滝もなく簡単にウツボギ沢とナルミズ沢の出会いに到着。(午後1時半)
ナルミズ沢に入ってからは、一ケ所左岸を高巻くゴルジュ帯があるがそれを除くとほぼ流れを忠実にたどることができる。
午後3時半大石沢出会い。本流左岸に格好のビバークサイトがありここで一夜を明かすことにする。回りは草付と潅木帯で大きな木が少なく薪集めに苦労するが大石沢を少し登って何とか一夜の薪を得ることが出来た。

平成15年9月28日 曇り

午前7時 出発
午前8時 魚止めの滝(6m) 宮本君は単独で滝右の凹角を登る。渋いという程ではないが出口は傾斜がきつい。(写真3)酒井はその右手を簡単に高巻いた。
しばらくすると二つに割れた航空母艦のような巨大な雪のブロックが出てくる。さすがは豪雪地帯だ。またしばらく進み9時30分頃ナメが連続する源流地帯に入る。(写真4)
まっすぐ沢を詰め最期の二股を左にとれば大烏帽子岳に続く稜線まで踏み後が続いているということであるが、その少し手前で小滝の上から稜線目指してスラブと笹が混じる斜面を登ってしまう。午前10時40分大烏帽子岳を正面に見る稜線(高度1,700m)に立った。
あたりは一面の草原である。岩混じりの地表と激しい風が樹木の生育を許さないのだ。
沢の愛好家の間では「天国に続く草原」と絶賛されているところだが、今日の登りは結構応え天国どころではなかった(写真5)
この後白毛門・朝日岳・清水峠と続く主稜線に出て尾根歩きを続ける。朝日岳に出るまでは踏み跡程度の道で結構歩きにくい。白毛門(1,720m)には午後4時到着。少し天気が回復して対面の一ノ倉沢や幽ノ沢の岩壁が良く見える。
白毛門を下りだしたところで救助のヘリが飛んできた。白毛門沢で事故があったらしい。
白毛門の降りは時々鎖場も出てくる急なもので、重荷を背負って下るのは応えた。
午後7時50分東黒沢にかかる橋にようやくたどり付き冷たい水流で顔を洗い長かった「沢から沢の旅」に終止符を打った。

なお遡行終了点から土合まで今回は9時間近くかかっているが、これはへばり気味でゆっくり歩いたためであり、通常の状態であれば6時間程度みておけば十分であろう。

なお今回登攀具としては、20メートルザイル、カラビナ、ハーケン、アイスハンマーを用意していった。ザイルは1度だけお助け紐的な使い方をしただけであり20メートルが一本あれば十分であろう。

写真1 ハナゲの滝

写真2 東黒沢の滝を登る

写真3 ナルミズ沢魚止めの滝

写真4 ナルミズ沢源流のナメ

写真5 天国に続く草原と大烏帽子岳